録音テープ【 3 】
鬱・グロ・残酷描写を含みます。
魔法少女のイメージを崩したくない方は
閲覧をおすすめしません。
《録音テープの記録3》
私たちの移動は基本的に車だった。
車に乗っている間は、1列目に運転手と助手席の人。
2列目に私たち魔法少女。
3列目に特殊部隊の格好をした人たち。
で座っていたから、完全に無防備。
計画はこう。
まず、1番左に座るカレンが車のドアを開ける。
そして私たちはそのまま車から飛び降りる。
飛び降りたら、すぐ走って逃げる。
逃げる方向は車が侵入できない街中にしようって決めた。
.....決行の時は、すぐに訪れた。
また夜中に警鐘が鳴って私たちは無理やり起こされた。
急かされながら車に押し込められ、
私は二人に逃亡のアイコンタクトを取った。
二人はすぐ気づいて、無言で頷いた。
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そこからしばらく沈黙が続く。
おかしいな、と思い
録音機を叩こうと手を伸ばした時
少女の声が戻ってきた。
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.....作戦は失敗だった。
車から転げ落ちたカレンは頭を打って、
大怪我をした。
次に飛び降りる予定だったカエデは
怖くなったのか、車の中で身体を強ばらせて
動けなくなっていた。
私は多分、早く!とか何してるの!とか
そういうことを大声で言っていたんだと思う。
車が止まって、地面で呻いているカレンが回収された。
カエデはずっと
ごめんなさい、ってブツブツ呟いていて。
なんだか私はその姿にとても腹が立った。
.....今考えればあまりにも無茶な作戦だった。
私たちは二人でそのまま
現場へ向かって、いつも通り化け物を殺した。
もう何も感じなかった。
逃げられなかった絶望と、カエデへの怒りと。
カレンの頭から大量に流れていた血が
脳内に焼き付いて、離れなかった。
幸い、カレンはすぐに治療を受けたお陰で
大事には至らなかった。
でも、今回のことで私たちへの監視は
より強化されてしまった。
部屋を出れば人が駆けつけて監視されて、
車で移動する時も
狭い車内にみっちりと監視の人が配置されていた。
部屋の中にはいつの間にか
監視カメラが取り付けられていて、
完全に誰かに管理された生活を強要された。
.....もう、限界。
そう感じた。
あの日からカエデは私に会う度、
気まずそうな顔をしては愛想笑いをするようになった。
カレンは.....以前とあまり変わらなかったかな。
元々無口な人だったし。
無謀だと...二度と元の生活には戻れないんだと
私はずっと泣いていた。
お母さんとお父さんに会いたかった。
友達とお喋りしながら昼休みを過ごしたり、
恋人.....とか作って
放課後にデートしたりしたかった。
当たり前だと思っていた普通の生活が
勝手に取り上げられて、壊された。
たまに来てくれていたお母さんも、
だんだんと来てくれなくなった。
最初は会うのが難しいのかなって思っていた。
でも、違った。
.......最後に会ったのはいつだっけ。
半年...?一年.....?
それとももっと前かな。
正確な時間はずっと昔に分からなくなっちゃったから。
そりゃあ、無茶苦茶な生活を
強いられていたんだもの。
当たり前だよね。
最後に会ったお母さんは、
見たことの無いブランド物のカバンを持っていた。
お化粧もとっても濃くなっていて、
大きな宝石のついたアクセサリーをつけていた。
お母さんは私の知らない人になっていた。
後から知ったよ。
魔法少女を提供した家庭には
特別感謝資金が国から贈られるんだって。
お母さんは私を売って贅沢な暮らしをしていた。
ごちゃごちゃした見た目の
知らない女になったお母さんに、
私は酷く癇癪を起こして怒鳴った。
睡眠不足と過労とで
精神的に追い詰められていた私は、
きっと爆発してしまったんだと思う。
.......お母さんは本当に、
それから二度と私の前に現れなかった。
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