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鏡鏡鏡鏡  作者: 恒河沙
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平定

「よく考えてみれば、出雲組を片付ける方法は簡単だな。この三つ残っている爆弾を出雲組のアジトに投げ入れればいいだけだからな。」

 俺はようやく息が整い、体が自由に動くようになってから、出雲組のアジトに向かいながら、そう言った。


「でも、出雲組を爆破していいのか?」

 俺は月読に確認するように聞いた。だが、月読はなぜそのようなことを聞くのかと言った表情で、首をかしげていた。


「いや、お前はずっと出雲組にいたわけだろう。出雲組に愛着と乾いてないのかと思って……。」

「いや、まだ、あそこに来て、一か月も経ってないよ。あんな所にいたくないから、愛着なんてないよ。」

「そうなのか、つい、出雲組で育ったような古株かと勘違いしていたんだが、違ったのか。」

「あんな奴らの中で、育ったなら、熊襲組相手にあそこまでやれる程、強くなれないよ。僕はもっと平和で自由に生きてたよ。それなのに……。」

「それなのに?」

「……気付いたら、ここにいた……。」

 月読は表情を曇らせて、言葉を詰まらせた。


「とりあえず、僕のことは気にしないで、出雲組も木っ端みじんにしていいよ。」

 そんな会話をしている内に、出雲組のアジトにたどり着いていた。出雲組のアジトは、熊襲組のアジトと違って、建物は二階で、大きかった。爆弾一つでは、足りないので、爆弾を二階の窓に一つと入り口に一つを投げ入れることにした。


 俺は爆弾の錠を右手と左手に持つと、月読に出雲組の入り口の扉を開けるように言った。すると、今まで大人しくしていた天照がしゃしゃり出てきて、俺が左手に持っていた爆弾の錠を奪い取った。俺は雑に奪い取るので、起爆しないかひやひやした。


「わらわも投げるのじゃ。そちだけがずっと手柄を取って、ずるいぞ。だから、わらわもやるのじゃ。」

 俺はこんな危なっかしい奴に、任せたくはなかったが、もう一度無理に奪い取ろうとして、爆弾が起爆してしまってはいけないので、何も言わず、任せることにした。


「じゃあ、お前は俺が一階に爆弾を投げた後に、あの二階の窓に向かって、その爆弾を投げ入れろ。」

 天照は嬉しそうにその提案を聞き入れた。うきうきと爆弾を振り回す姿を見て、内心ドキドキしながら、俺は早く終わらせて、天照から逃げる準備をしようと、すぐに月読が開けた入り口に向かって、爆弾を投げ入れた。


 爆弾は上手く起爆したようで、全ての一階の窓が吹き飛んで、投げ入れた入り口からも赤い爆風が噴き出してきた。しかし、熊襲組のアジトと違って、出雲組のアジトは頑丈なようで、もちろん燃えていたが、窓以外の部分は爆風で壊れていなかった。


 俺は天照に合図を送って、二階に爆弾を放り込むように指示した。しかし、天照は爆弾を投げ入れるような動作をすることはなく、手に爆弾を持ったままだった。


「……やっぱり、お前に手柄を取らせてやろう。」

 そう言って、気まぐれな天照は爆弾の錠をこちらに手渡してきた。俺はその錠を受け取った。俺は二階に向かって、爆弾を投げ入れようと思ったが、少し遅かったようで、二階の窓から三人の男が飛び出してきた。


 飛び出してきた男は、あの細男と大男と組長の男だった。ただ、組長の男は細男に担がれていた。細男は、地面に着地すると、組長の男をその場に置いた。細男はこちらの方をぎろりと睨みつけた。


「月読、裏切ったのか。」

 細男はそう言って、刀を抜くとこちら側に向かってきた。そして、それについてくるように、大男もこちらに動き出してきた。俺は手に持った爆弾を向ってくる二人に投げ、天照と月読の二人を抱えて、できるだけ爆発から逃げた。


 ある程度離れた所で、後ろから背中の服が焼けそうなほどの熱風が襲い掛かり、風圧で体が浮いた。体が浮いた状態でも、姿勢を保ち、上手いこと地面に立って着地した。


「熱いのじゃ。」

 天照はそう言って、服に火が付いていないか見渡すために暴れていた。俺は急いで、後ろに振り返ると、爆弾によって、焼け野原になっていた。舞い上がる炎の中に、刀を持った人影が一つだけ浮かび上がっていた。


 段々とこちら側に近づいて来ているようで、人影は大きくなっていた。すると、人影は刀を上に挙げると、すぐに下に振り下げた。そうすると、炎は刀の軌道に合わせて、真っ二つに切れた。


 すると、息を荒くして、服が焼け、火傷でただれた肌があらわになった細男が炎の切れ間から見えた。火だるまになっているかと思ったが、刀を振るった風圧で、火を吹き飛ばしたようだ。


 確かに、月読がこの細男に力だけで勝つことはできないだろう。思ったよりも強いのかもしれない。


 細男は炎から抜け出すと、こちらに向かって加速してきた。俺は右手から刀を出して、その細男の首に合わせて、刀を振るった。しかし、その動作を見切った細男は、俺の間合いで立ち止まり、俺の刀を自分の刀で受け止めた。


 受け止めた相手の刀は、俺の刀の振りに少し押されていたが、ある所で進まなくなった。力はかなり強いようだ。俺は相手と鍔迫り合いをしている隙に、俺は相手に話しかけた。


「俺はどちらの手に刀を握っているでしょうか?」

「右手だろ。片手なのに、俺が両手で受け止めるのが限界とはな、やはり、お前は鞘無しなんだな。」

 俺は刀で相手の刀をはじいて、目を金に輝かせて、右手に持っている刀を左手に入れ替えて、細男の腹を切りつけた。刀は左からするりと細男の腹に入り、右側から出てきた。


 細男は両手で刀を持ったまま、頭を下に向けて、自分の切りつけられた腹を見た。細男はドロドロと腹から溢れ出す血を茫然と眺めていた。そのまま、細男はゆっくりと頭から倒れこんだ。


「不正解、答えは左手でした。」

 俺は刀を振るい、刀に付いた血を右手に出した布で拭き取った。刀を綺麗にして、刀を消すと、細男の姿はもう消えていた。ただ、その場に血だまりが残っているだけだった。

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