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鏡鏡鏡鏡  作者: 恒河沙
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最強の陰陽師

「いったん座れ。」

 俺は左手から刀を消して、月読の肩を下に押さえて、地面に座らせた。月読はほっと胸をなでおろしながら、あぐらをかいて座った。


「月読といったか?その目は誰から受け継いだ?」

「受け継ぐ?」

「お前は銀の陰陽師なんだろう。誰からその銀の目を受け継いだんだ?」

「受け継ぐも何も生まれた時からずっとこの目だよ。と言うか、陰陽師って何なんだ。」

「嘘をつけ、銀の目を誰から受け継いだかが分からないことはいいとして、陰陽師を知らないなんてことはないだろう。」

 しかし、俺は先ほどの出雲組での出来事を思い出し、月読は本当に陰陽師のことを知らないのかもしれないと思った。


「なら、一つ確認だ。お前のいる出雲組で一番強いのは、お前を見張りに指名したあの細男か?」

「いいや、一番強いのは僕だね。二代目はまだまだだよ。」

 月読はドヤ顔でそう言った。俺は右手に持った銃を月読の前に持って行って、話を続けた。


「それはこの銃を使ったらということか?」

 月読は自信満々の顔をゆっくりと崩し、自信なさげな顔で目を逸らした。おそらく武器ありの勝負では勝つ自信はあるが、武器無しの勝負では負けると言うことだろう。実際、俺の目から見てもそのようなものだろうと考えていたから予測通りだった。


「お前は出雲組を辞めて、俺の所に来い。


 命を取り合う勝負の世界で、まともに陰陽道も知らない連中の中に、銀の目のお前がいる状態は良くない。これは俺のエゴだけじゃなくて、お前のことを思ってのことだ。その銀の目は世界中で欲しがっている奴は多い。


 その銀の目をめぐって、お前の命を狙ってきた時、あの細男がトップの出雲組ではどうにもできやしないだろう。俺はあの細男よりもはるかに強い。だから、俺に着いてくる方が少しは安全なはずだ。それに銀の目と金の目、この二つがそろう方が面白いと思わないか?」

 月読は乗り気ではない顔をしてこちらの方を見つめている。


「確かに僕もこの組を今すぐにでも抜け出したい気持ちはいっぱいなんだけど、簡単に抜けさしてくれないし、何より陰陽道やら銀の目やら金の目やらよく分かんないし……。」

 月読は手を揉みながら、もじもじと迷っている様子だった。


「出雲組なら心配をするな。あんな連中が束になってかかってきた来た所で敵じゃない。」

「ならどうして、出雲組を襲撃せずに、交渉しに来たの。わざわざ手足に爆弾を付けるまでして交渉すべきだったの。」

「それは……、お前が俺の仲間になるならその理由を教える。」

「……ふーん、じゃあ、陰陽道とか、目について教えてよ。どちらも全く知らないから。」


「本当に陰陽道も知らないのか、まともな人間に育てられてないんだな。


 はあ……、じゃあ、陰陽道から目の説明をしていくな。


 世界は右と左、上と下みたいな相容れない反対の関係にある二つのものが存在することで成立している。


 俺達は知らない内に、この二つを区別することができるよな。上と言われれば空を見上げるし、下と言われれば地面を見つめる。どこからが上で、どこからが下かなんて誰からも教わっていないが、なんとなく上と下の境界線が分かっている。


 これは”太極たいきょく”と言う根源的な力が上と下をくっきりと分けているからだ。


 太極は全ての相容れない二つのものの間に存在する。そして、その太極の力を使うことができる人間を陰陽師と言う。ただし、ある例外を除いては一人に対して、一つの太極しか使うことができない。


 つまり、上と下の太極を使う陰陽師は、右と左の太極を使うことはできないし、上と下の太極以外の太極を使うこともできない。


 陰陽師は太極を使うと言うことは、太極が分ける二つのものを自由自在に扱うことができる。だから、上と下の陰陽師は、上と下を自由に入れ替えたり、上と下の境界線を曖昧にしたりすることができる。


 ここまでが簡単な陰陽道の説明だ。そして、俺達にとって重要な部分はここからだ。この陰陽師の中でも強い太極を持つ者は、瞳の色が変わる。それもたった三色だけだ。俺の金、お前の銀、そして、銅だ。もちろんそれぞれの色の瞳を持つ者はこの世界で一人だけだ。」


 月読はしばらく俺の言ったことを頭の中で整理させている様子だった。今にも頭から湯気が出そうなくらい、顔を赤くしていた。段々と言われたことを理解していき、顔の赤みが消えていった。


「なるほど、じゃあ、僕凄いってこと?」

「そうとは限らないな。俺の太極の力を見ただろう。金の目にもかかわらず、右と左を分ける太極だ。右手に握った硬貨を左手に移動させたり、右と左の境界を曖昧にして、両手から持っているものを消すくらいしかできない。」

 俺はそう言って、右手に持った銃を消して見せた。


「俺は金の目と聞いた時から、最強と言われる始まりの陰陽道である陰と陽の太極を使うことができると思っていたんだが、そうではなかったらしい。」

 俺は軽くため息をついて、月読はその様子をいぶかしそうに見つめていた。


「陰と陽?」

「陰と陽はかなり噛み砕いて言うと、明るいものと暗いものだ。陰と陽は陰陽道の根幹と言えるもので、神話では金の目が陰と陽の陰陽師だったと言われている。


 だが、実際は違った訳だ。もし、俺が陰と陽の陰陽師なら手から光線を出せるだろうが、出そうもないしな。」


 俺は右手を開いて、力を込めてみるが、もちろん光線など出るはずがない。この金の目を受け継ぐ前から陰と陽の陰陽師ではないと言われたが、もしかしたら突然力が目覚めるのではないかと時々試してしまう。


 結果はいつも分かりきっている。まず、陰陽師になった瞬間に、太極の力をどのように使ったらよいかと言うことが生まれる前から知っていたかのように当たり前かつ自由自在に使うことができる。その感覚がない時点で陰と陽の太極を使うことはできないのだ。


「なあ、さっきの銃を返してくれないか?」

 月読は依然として不思議そうな顔をして、そう言った。俺は銃を使って、反撃するつもりかと思ったが、なんとなくそうではない気がして、右手から銃を出して、月読に渡した。月読は銃を受け取ると、銃をくるりと回して、引き金に指を入れた。


「確かめて欲しいんだけど、これは何を分ける太極なのかな?」

 月読は銃の狙いを近くの木に向けると、引き金の引いた。すると、銃の先から太陽を直接目で見たような眩い光が一直線に、月読の狙った木へ放たれた。光はすぐに引いていったが、光を受けた木は光を受けた場所からメキメキと音を立て、その部分から上の木が斜めに倒れていった。


 葉が付いた大きな木が地面に落ちていく音と様子を見ながら、俺は口を大きく開けて驚いた。月読は明らかに陰と陽の太極を使う陰陽師だったからだ。

 私の陰陽道と太極の考え方は、独自の解釈となっています。実際のものと異なります。

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