VS牛鬼②
俺は右手から刀を出して、牛鬼の体に向かって上から下に斬り付ける。簡単に相手が斬り付けられることはなく、後に身をかわして、斬撃をよけた。相手は下に斬りつけられた刀の上に、持っていた刃物を乗せ、次の攻撃を防ごうとした。
俺はすかさず右手に持った刀を能力で左手に移した。すると、相手は押さえていた刀が急に消えたので、相手は勢い余って、前屈みのままこっち側によろけてきた。俺は相手の前屈みになった背中を斬りつけた。
背中の傷はあまり深く入ることはなく、相手の背骨にかするほどの傷しか入らなかった。相手はその傷にひるむことなく、こけそうな程前のめりになりながら、地面を蹴り上げて、俺の懐に入って、刃物を突き立ててきた。
俺はもう一度左手の刀を右手に入れ替えて、相手の手首に刀身を当てた。相手はそれに気が付いているようだったが、慣性に従って動く手を止めることができずに、刀が相手の手首に入り込んでいく。肉の感触が終わり、硬い骨の感触が感じられた時、相手は反対の手で手首に傷が入った手を止めて、手首の傷がそれ以上広がらないようにした。
さらに、相手は慣性に従う手を止めた反動の力を手首を素早く折り曲げることで上手く使って、持っていた刃物をこちらに投げてきた。俺は至近距離で、急に投げられた刃物に反応できずに、そのまま投げつけられた刃物は俺の脇腹をかすめた。
脇腹からは血がにじんでいた。俺は痛みに耐えながら、腕が伸び切った右手の手首を曲げて、相手の手首を斬りつけた。相手の手首の骨を断つ感覚が伝わってきたが、その前に相手の蹴りが俺の脇腹を捕えていた。俺は強い蹴りに耐えきれず、後に吹き飛んでしまう。
俺は大分後ろに吹き飛ばされた。俺は刀を消して、受け身を取り、衝撃を和らげた。俺の体はごろごろと回転し、近くの木にぶつかった。俺は木に当たった背中に激痛を感じながら、何とか意識を保った。俺はしばらく痛みにひるんだが、相手の姿を捉えようと、周りを見渡す。
しかし、相手は背中を向けて、逃げようとしていた。俺はすぐに立ち上がって、牛鬼を追っていこうとするが、服がに引っ張られ、上体を上げることができなかった。俺は良く体の方を見ると、二本の刃物が右脇と左脇に自分の服を突き刺して、後の木に深く刺さっていた。
刃物は上手いこと体の身を避けて、服だけを突き刺していた。俺は右と左の刃物を引き抜いて、立ち上がると、牛鬼の姿はもうどこにもなかった。