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鏡鏡鏡鏡  作者: 恒河沙
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VS牛鬼①

 黒装束の男は、倒れこんだ白装束の男の手のひらに向かって刃物を投げつけた。すると、白い服の男は、悶絶するような悲鳴を上げた。その後、しばらく白と黒の二人は話していたが、小さい声で話していたので、上手く聞き取ることができなかった。


 会話がしばらく続くと、黒い服の男は怒ったようで、刃物を持った手を上に大きく上げて、白い男に突き刺そうとした。僕はこれはヤバいと思って、手に持った鳴鏑を出して、黒い服の男に向かって撃った。僕が撃った光は、闇夜を切り裂き、黒い服の男に向かっていった。


 黒い服の男はその光に気が付き、咄嗟に身を逸らして、間一髪のところで光線をよけた。僕はよけられたことが分かると、急いで、身を逸らした相手の足元に光線を撃ち込んだ。しかし、この光線も見切られ、相手は地面を蹴って、後に飛んだ。


 相手の飛んだ先は、闇が深く、相手の姿を見失ってしまった。僕はとりあえず、そのあたりを照らすために光線を撃ち込んだ。だが、光線の照らす先に人影は見当たらなかった。僕はしばらく光った周辺を探していた。


 しかし、右横の木々が微かに揺れる音が聞こえて、急いでそちらに振り向いた。すると、刃物を突き立てている黒い服の男が手を伸ばせば届くような距離に近づいていた。僕は相手の刃物を鳴鏑の銃身で受けた。僕は相手がたくさんの刃物を持っていることを分かっていたので、銃身で刀を受け止めた後、相手の腹を足で蹴りつけた。


 だが、相手は僕の蹴りに全く動かなかった。相手は反対の手に刃物を持とうとしていたので、相手の刃物を受け止めている鳴鏑の銃身を少しずらして、近くの木の幹を撃った。撃たれた木の幹は、メキメキと音を立てて折れた。


 相手は光で少しひるんだことにで、落ちてくる木より速く切りつけることができないと考えたのだろう。刃物にかけた手を離して、後に下がった。木が地面に落ち、砂埃が上がった。僕は牽制のために、光線を砂埃に向かって乱射した。


 僕はさっきのようにいつの間にか近づかれていることのないように、耳を澄ませた。僕は右と左に注意を払いながら、木が落ち切った後の静寂の中に、相手の影を探した。


 しかし、そう悠長に相手の影を探している暇はなく、相手の影より先に目に入ってきたのは、こちらにすばやく飛んでくる鋭い銀色の刃物だった。僕がその刃物に気づいた時には、その刃物は体をずらしたとしても、突き刺さることは避けられない距離にあった。


 僕は少しでも致命傷を避けることくらいしかないと諦め、覚悟を決めた時だった。僕の服に刃物が触れた時、突然横から石のようなものが飛んできて、刃物の柄に命中した。刃物は柄に医師が当たったことで、刃先がくるりと回転し、僕の服を横に切り裂いた。


 僕は致命傷回避のために、身を逸らしていたので、刃物をかわすことができた。僕はほっとして、深く息を吐いた。そんなことをしていると、僕の近くに誰かが立った。僕はその近くに立った人間に向かって、急いで鳴鏑を突き立てた。


「わらわじゃ、その銃を下ろすのじゃ。」」

 鳴鏑を突き立てた先にある顔は、黒い服の男尾の鬼の面ではなく、天照の鬼の面だった。


「少し分が悪いのう。」

 天照はその場に落ちていた小石を拾い上げた。天照は指の上に小石を転がした後、急に後ろを向いて、小石を思い切り投げた。小石はすぐに闇に消えていったが、闇の先で痛がる声が聞こえた。天照はその声の先にすかさず、倒れた木の枝を切り取って、投げた。


 投げられた枝は、矢のように飛んでいった。すると、もう一度闇の先で痛がる声が聞こえた。今度はずっと痛がる声が聞こえた。僕はチャンスだと思って、その先に向かおうとした。


「ここまでじゃ。深追いせん方がいい。」

 天照は立ち上がろうとする僕を静止した。


「奴は牛鬼じゃろう。手負いと言えど、この闇の中では相手にせん方がいい。」

 天照は相手を知っている口ぶりだった。僕はいつもとは違う圧に押されて、向かうはずだった足を戻して、その場に立った。しばらくすると、痛がる声は段々と遠ざかっていった。





 私はふとももに突き刺さった木の枝を抜いた。木の枝を抜くと、血がドクドクト吹き出し、痛みと熱さが悪化した。思わず声を出してしまった。どうやら、あの鬼の娘からの攻撃は止んだようだ。


 私は足をかばいながら、村の入り口の近くに付いた。


 私は何度もこの村から離れてしまおうと覚悟を決めていたのに、迷ってしまう。このまま私はこの村を離れていいのか、離れるべきではないのか。


 ……


 私は村の入り口を背にして、このまま村を離れることにした。


「八上さんは置いていくのかい、牛鬼さん。」

 私は周りを見渡すと、昼の男が木の陰から出てきた。


「いや、見つかってよかったよ。あの牛鬼と戦う機会なんて、このごないだろうからね。


 ところで、善の陰陽師は殺したのか?」

 私は目を逸らした。


「まあ、いい。このまま村を離れようとするならば、俺はお前を引き留める。」

 彼はそう言うと、突然手からきらりと光沢のある刀を出した。

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