この光の先に全てを託す
「……まさか、こんな日が来ようとは……。」
大和は体中に受けた無数の刺し傷から血をドクドクと流し、とても苦しそうな表情をしている。まさか、大和の服が相手の返り血以外で染まる日が来ようとは思わなかった。
「私の力は神をも凌ぐものと驕っていた。
だが、実際はこの様だ。私の全てを出して戦ったのにもかかわらず、神に勝つこともできず、封印をすることが精一杯だった。
小碓、この力を引き継いでくれ。
いつかこの封印が解けた時、この力を使うことができるように、力を引き継いでいってくれ。私は髪と戦って、ようやく理解した。神の力は人間一人の力ではどうしようもない。
だが、人間が神を凌ぐことがあるのならば、この短く儚い命の灯を未来へ繋いでいくことだ。この私の命をお前に伝える。お前も誰かに伝えてくれ。そうして、伝え繋いだ先に神をも凌ぐ力を人間が得ることがあるかもしれない。」
大和は瞳の色を金色に輝かせた。
「この金、そして、私の力を分けた銀と銅全てを未来に繋いでくれ。
そして、これは私のわがままなのだが、この大和と言う名前もお前が引き継いでくれないか?
私は……、私はこの戦いに勝つためだけに、生まれてきたのだと思っていた。だが、負けてしまった。」
大和は悔しさを奥歯で噛みしめ、金色の瞳から大粒の涙を流していた。
「だから、この力と名前を受け継いでくれないか?
この目の光が消えない内は、私は死なない。」
大和はゆっくりと目の光を私の方に移した。大和の呼吸が段々と弱々しくなっていった。大和は最後の力を振り絞るように、口から一つ言葉を紡いだ。
「この光の先に全ての託す。」
大和は目を閉じ、ゆっくりと息を引き取った。