オカリナ?
オカリナ?
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅ落ち葉を踏み締めながら土手を、ふぬゅふぬゅふにゅふにゅ歩いている。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
ギンラギンラとした陽射し、逆光で真っ黒な落葉樹の引っ掛かった枝、揺ら揺ら風の揺らす影を色濃く地面に投写していました。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
グァッ! グァッ! グァッ!
林の向こう側の鴨達ちが、はしゃいでおります。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
蔦だらけの藤棚の下、ふぅ〜と溜息をつかれているお爺様が……。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
キャッハキャッハとブランコではしゃいでおられます子供達ち……。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
何処からか調べが聴こえて参ります……?
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
懐かしな……オカリナだよな……?
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
前はオオボエ吹いた学生がいたな……?
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
聞き覚えのあるメロディライン……。
涙そうそうだ……凄い……あってる……。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
テンポも良いし……わたしの中のメロディと壱致してる!
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
何処から……何処から……。
てくてくてくてく……ふぬゅふぬゅふぬゅ……。
木々の間から……音のする方を追って行く……青年では無い様だ……年齢が分かりづらい体型の男性が、オカリナを一心不乱にお吹きになっておられました。
繰り返し繰り返し涙そうそうを吹かれておりました……。
わたしは口ずさみながら……とぼとぼてくてく川原の道を抜け橋を渡って行きます……背に段々と小さく無ってゆく……オカリナ涙そうそうが風の調べに揺れながら……グァッグァッグァッ! と鴨の親子たちが橋の下、川面に溢れおりました。
てくてくてくてく……わたしは歩いて行くのです……。