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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

214メートル先の男

作者: 緑鹿

殺し屋3人娘「千夜(ちや)朱莉(あかり)陽菜(ひな)」の元に新たな依頼が来た。

それはある男を消す事。実行役の千夜にとって、ターゲットを消すことなんか微塵もない事だった。

「やつが出てきましたよ」

ターゲットの男が出てきた事を朱莉(あかり)が確認した。


あぁ、分かってる。匂いですぐ分かった。

アンモニアの匂いだ。


「くっさーい、何この鼻に直接くる感じのいやーなツーンとした匂いは!?」

隣で寝ていた陽菜(ひな)が目を覚ます。


陽菜の嗅覚は異常だ。犬と同じで我ら人間の3000倍以上の嗅覚を持っている。ターゲットまで200メートル以上あるぞ。

だが今回はそんな異常な嗅覚を持っていない私でもすぐに分かるこの匂い。


これは疲労臭だ。精神的なストレスや肉体的な疲労がたまると、血液中のアンモニア濃度が上がる。

アンモニアが血管からガスとしてしみ出して、臭ってくる。

あの男の顔を見たら分かる。相当過度なストレスを受けているんだろう。

そして、見た目どおりの暴飲暴食体型、運動不足も相まってこの匂いを生み出してる。


疲労臭男は会社から出てきた所だ。取り巻きを何人か連れているが、

ターゲットまで214メートル、楽勝だ。


私達はターゲットの男を斜め方向から見下ろす事ができるビルの屋上にいる。遮るものは何もない。

私は構えた狙撃銃のトリガーを引く。

一瞬だ。一瞬で7.62x54mmR弾が疲労臭男の脳を貫通する。即死だ。


周りの悲鳴と共に疲労臭男は倒れる。

ここからが厄介な所だ。私は殺した相手の人生を見る事が出来る。昔からそうだった。

ターゲットが死んだ瞬間に強制的にその世界へ送り込まれ、俯瞰的に見る事になる。

見なくて良いもの、見たくも無いものまでありとあらゆるものを、この不可解な能力で見てきた。

 

今回も案の定それが始まった。

これは…どうやら、娘が産まれ新居に引っ越した時の記憶のようだ。新築一戸建て、これから頑張るぞってな感じか。

疲労臭男と妻のこの笑顔。疲労臭男も今より少し痩せていて、「これから頑張るぞ!」 なんて言ってら。


私の視界が急に狭くなる。次の記憶に飛ばされるようだ。

「くせーんだよ、クソジジイ」

「誰のおかげで生活できてると…!」

娘が16歳くらいだろうか。齷齪働いて16年。

娘と妻の為に働き、毎晩の様に付き合いたくもない接待へ行き、土日は倒れ込むように家で寝る。過度なストレスと暴飲暴食、運動不足により、疲労臭男となってしまった。


娘はクソジジイと言い残すと家を出ていった。

同じ空間に居たらそりゃ、こっちの脳もイカれそうだ。なんせアンモニアの匂いが家中に染み付いている訳だからな。

「あなた、気晴らしに公園にでも散歩に行ってきたら?」

妻にそう言われた疲労臭男はどうやら散歩に行ったようだ。

家中の窓という窓が全開になっている。

両隣の家は晴天の昼間だってのに雨戸すら締めてら。

虚しい光景だ。


また私の視界が急激に狭くなる。次の記憶に飛ばされたんだ。

家には妻しかいない。どこかに電話をかけている。

「もう我慢出来ないんです、こっちの頭がおかしくなりそうで…一日でも早く殺してほしいんです」

あぁ、ウチに依頼の電話をかけてきたのは妻だったのか。

虚しいな、こんな事で殺されるなんて。

ん?

あぁ、隣の部屋で全て聞いてたんじゃないか…疲労臭男が項垂れている。

殺される事を知ってたんだ。それなのに警察や妻を咎める事もなくいつもの日常を演じた。


そして私が撃った7.62x54mmR弾が頭を貫通して疲労臭男の人生が終わる。


急激に視界が狭くなる。



元の時代に戻ったようだ。

心配そうに陽菜が顔を覗き込んでいる。

千夜(ちや)ちゃん大丈夫?いつものやつ?見えたの?」

あぁ、私は千夜だ。戻ってきた。

でももう大丈夫だ。ありがとう。


214メートル先では救急車、パトカーのサイレンの音、野次馬、マスコミ達で騒々しい。


父親が何者かに殺されたという事を知らない娘と、殺しを頼んだ妻。

まさか疲労臭のせいで殺されるなんて思ってもみなかった男。


「さーて、依頼完了って事で報酬を請求しましょうか。」朱莉が仕事の終わりを告げる。


依頼完了の連絡は待って。と朱莉に伝える。


殺されると分かってて普段通りの自分を演じた男。もうどうでもよかったんだろうな。死という道を選び、ストレスから開放されたせいなのか、男の匂いは幾分ましになっていた。


「さー、かえるよ!おなかすいたー!」

陽菜に手を引っ張られ現場を後にする。


さー、何を食べて帰ろうか。

たまには家庭料理でも食べたくなる……丁度料理を作ってくれそうな人物の顔が浮かんだ。

突然殺し屋3人が依頼主の元へ押し掛けても大丈夫だろう。


男が最後に自宅で何を食べる予定だったのか確かめに行こう。


そう思うと私の足は男の帰り待つ妻の家へと向かっていた。

いつもより早い足取りで。

御覧頂きありがとうございます。

初めて小説を書いてみて、作家の方々の凄さを染み染みと感じました。

愚作ですが、これから日々精進していく所存ですので、応援いただけますと幸いです。

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