7知渡子の場合
知渡子視点
わたし、日堂知渡子には最強のチートがある。
【アンチチート】。簡単に言うと――チートを超えたチートだ。
つまり神よりも神なのがわたしこと知渡子だ。
と、わたしの自己紹介なんて別にどうでもいいだろう。
そう、現在のわたしといえば、家の玄関を開けたところだった。
「もう! どうしてあなたはそんな力を持って生まれたの……」
と、外出しようとしていたわたしに向けて言ったのは叔母だった。
「日堂家に生まれておきながらそんな非人道的なチートを持っているなんて……あなたの所為であなたの両親は死んだのよ!」
叔母が恨みったらしく言ってくるのはいつものことだ。
日堂家はヒトの役に立つチートを持って生まれる……なのにわたしのチートはヒトを巻き込むチートだった。
【感染】わたしの持つチートの中にはそういうモノがある。
「はいはい、いつも同じこと言うのね、叔母上様」
「何よ! その反抗的な態度は!」
「別に、いつものことじゃない」
わたしは叔母が嫌いだ。大災禍でわたしの両親ではなく叔母が死んでいればよかったと思うほどに嫌いだ。
「それで叔母上様、わたしに何か用?」
「もう学校へは行かないでくださるかしら?」
「はぁ?」
そんなのはわたしの勝手だろ。
「あなたが学校へ行くと保護者のわたしが困るの」
「保護者なら保護者らしくすれば?」
「お黙り! 日堂の宗家の血筋だからって威張り腐って! もう……お願いだからわたしたちに迷惑かけないでよ」
泣き崩れる叔母を無視するわたしは学校への道を歩いて行った。
今日は林業の仕事を体験してみようという行事で、わたしのクラスは森林地帯に来ていた。
そして森林地帯にいるのは――夜和斗だ、木の一本も切れないクソほど使えない夜和斗だ。
「ちょっとあんた! チートも使わないでよくノウノウと生きてられるわね、脳みそ無いの? それとも本当に能無しなの?」
わたしは今日も今日とて、学校にも通わない夜和斗にイライラしている。
「…………」
無視。虫けらのくせにわたしを無視するなんていい度胸してるわね。
「聞こえなかった? 仕事の邪魔だから消えろって言ってるの!」
「……もうそろそろ終業時間だから言われなくたって帰るよ」
(そういう意味じゃないわよ。退職しろって意味よ)
「あんたバカ?」
「バカだよ。ぼくは帰る」
「はぁ? 木の一本くらい切りなさいよ!」
「明日になったら切れるよ」
ああ、もう!夜和斗にはムカつく。いつもウジウジしていて、自信も無ければ意識もないようなその態度にムカつく。
「一つ言うことがある――いつもそんなにイライラしていて疲れない?」
ああもう! こいつには本当ムカつく。