55絶対に許さん、許さんぞ!
知渡子視点
「あの野郎許さないんだから!」
わたしは遺跡の壁を蹴りまくっていた。この行き場のない怒りを壁にぶつけているのだ。
「知渡子落ち着いて、今はこの地下を出ることを考えよう」とマヒト。
「ごめんみんな、ぼくが宝箱なんかに気を惹かれたせいでこんなことに……」
「大丈夫だよ夜和斗、誰も攻めていないよ」
とマヒトは言うが、わたしといえば夜和斗の胸倉を掴んで揺さぶっていた。
ああ、もう!
「清浄チート教団だかなんだか知らないけど、ぶっ潰す!」
わたしは怒りで我を忘れている。いや、こうして考えられているから我は忘れていない。
「そうよ、戦争よ! 第一次チート戦争よ!」
「戦争って……ぼくたち三人と一匹で勝てるの?」
「勝てる! わたしを誰だと思っているの?」
『残虐非道な日堂知渡子様です』「ワン!」
こいつら失礼ね。わたしが残虐非道? 清浄チート教団の奴らの方が残虐で非道よ。
「わたしのこと悪く言った奴今月の給料減額ね」
『ごめんなさい知渡子様、あなたは誰よりも道徳的であります』
手のひらは返すものね。
「でもどうしよう、ぼくたちここから一生出れないよ、チートも使えないんじゃどうしようもない」
それは確かに、どこかに抜け道があればいいのだけど。
と、そこでマヒトの持つ導きの石が光始めた。これはまさか、わたしたちを導いてくれるのではという淡い期待をしてみなくてはならない状況。
導きの石が反応しているのは、遺跡にある銅像の目玉らへんだった。
なるほど、あの場所に導きの石を付ければ何か起こるってわけね。
というか結構高い場所にあるわね。
「夜和斗、あなたわたしのペットなんだから付けてきなさいよ」
「ええ、ぼくが?」
「夜和斗お願い」
「しょうがないなぁ」
夜和斗は銅像の目に導きの石を付けた。途中何回も銅像から転落したのは語ることでもない事実。
と、地面が揺れ始める。
遺跡に扉が出てきた。
「これ開けたらどこに繋がっているの?」
それはわたしにも分からない。
「開けてみましょう」
わたしはドアノブを掴んで、回した。
「ほうほう、興味深い」
扉の先には、人間? がいた。本を読み漁っていたであろう彼は続けて、
「わしの名前か?」とわたしたちに言ってきた。
「いや、訊いてないけど」とわたし。
「そうか、では名乗ろう。わしの名はロキじゃ」
「そうですか。それで、あんた人間?」
「わしは神じゃ」
「……は? 神?」
「うわあぁぁーぼくたち死んでたんですね、この冒険も夢で本当はぼく死んでたんですね」
と、夜和斗は頭のおかしいジジイの服にしがみついた。
「な、なんじゃいこのこの子供は」
「ぼくは夜和斗です。世輪背川夜和斗です! ぼくはまだ死にたくなかったです!」
「世輪背川? なんと……生きとったのか!」
「はい? もう死んでるんじゃないんですか? ぼくたちって」
「はははっ、父親そっくりじゃなぁそのバカなところは」
「父親……やっぱりぼく死んでるんですね」
「死んどらんわ! いいからわしの服を放せ!」
わたしたちはロキとかいうジジイに色々と話した。
「それで仲間に裏切られたということか。さぞツラいだろう」
「ぼくは仲間だと思っていましたよ」
「はっ、わたしは最初から怪しいと思っていたわよ」
「日堂知渡子に世輪背川夜和斗か……まさかまたわしが日を見ることになるとは思わんかった」
なに独り言話してんだこのクソジジイ。太陽を見なかったから頭おかしくなったとか?
「まぁ何かの縁じゃ、ここから出してやろう」
「本当ですか!?」と、夜和斗はジジイの手を取る。
「うむ、わしに捕まっておれ」
「ほほいのほい」とジジイ。
わたしたちは青空の下に出れた。
「よっしゃー! 出れたってことで、今度は清浄チート教団をぶっ潰しに行くわよ!」
『おおー!』
と、ジジイはどこかに行ってしまったのか、姿が見えない。
まぁいいわ。借りは返さなくちゃいけないけど、いなくなったなら別に後で返せばいい。
待っていなさいロウ、復讐は一億倍で返さなきゃ。