53ギスギス
夜和斗視点
ぼくたちは砂漠地帯のギルドクエストに挑んでいた。
「前線上げてけ!」と知渡子。
「任せて! 領域乖離!」
「ポチ、次の武器持ってきて!」
「ワン!」
「ロウ! 知渡子に回復まわして!」
「……うす、了解っす」
「夜和斗! 刀打ち終わったよ。さっきより使いやすくなっている」
《刀 耐久力3000 攻撃力2000 スキル:攻撃力+40% (新)技量+20% 瞬発力+50%》
「ナイス、マヒト」
「消えなさいモブモンスター共!」
「うおおおぉぉ!」…………
「だんだんと熱耐性が付いてきたわ」
「いいな知渡子、ぼくなんてまだまだ汗だらだらだよ。マヒトは大丈夫?」
「わたしは鍛冶師だから熱耐性結構高いよ」
「そっか、ロウは?」
「自分はヒーラーなのでそんな動かないんで、楽ですね」
ロウとは打ち解けるのに時間がかかりそうだなぁ。なんか雰囲気的にぼくたちのパーティーに合ってない感が凄いある。
「回復なんだけど、あんた遅かったわね。本当にやる気あるわけ?」
「え!? 自分はやる気あるっす」
なんか不穏な空気が流れているのですけど知渡子さん。どうしてくれるの、凄いギスギスしているんだけど。
「ヒーラーならもうちょっと周り見れるわよね? 夜和斗に命令されるがままにヒール打ってりゃいいと思ってんの?」
いやいや、新入りにそんなこと急に言ってもさ、ほら、仲良くしようよ。
そんなことぼくは言えないよ。この重苦しい空気だもの。
「おれだって頑張ってますよ!」
「あらそう、中級冒険者のくせに今までパーティー組んだことなかったような動きだったわ」
知渡子さん、もうやめましょ。
「ふたりともやめなよ」とマヒト。
マヒトよ、君は神だ、助け船だ。この嫌な空気を綺麗に浄化してくれ。
「わたしからも言わせてもらうけど、知渡子は前に出すぎだよ。あれじゃあ夜和斗とポチしか付いていけないよ。それにロウ、あなたは本当にやる気ない感じ出してる、もっと真面目にやって」
えぇ、ちょっと待ってよマヒト。君も結構辛辣なこと言うのね。滅茶苦茶ギスギスしているよこのパーティー。
「まぁ、前に出すぎたのは謝るわ、ごめん」
「自分はヒーラーなので、パーティーでの立ち回りを見て判断するようにするっす」
『…………』
そして沈黙だ。
「まあまあいいじゃないか、今日はこのパーティーで初めてのギルクエだったんだから」
結局ぼくが言わなくちゃダメなのね。
「そうね、わたしたちなら砂漠地帯のギルクエも楽勝よね」
「知渡子の言う通りだね」
「……うす」
このパーティーはこの先心配だ。