52人員募集
知渡子視点
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい。ついでに入団してらっしゃい。ゼロのギルドがヒトを募集してますよ」
とマヒトは看板を上げながら言う。
「入団面接はこちらです」
夜和斗は案内人を務めている。
わたしといえば、
「……全然冒険者来ないわねぇ」未練がましく言う。
命とも言える水を供給できるようにしたギルドに誰も入りたがらないのはなぜだ? ブラックギルドってバレたか? いや、ちゃんと冒険者には休みを与えているし有給も与えている。なのになぜこんなにも冒険者が来ない?
「まさかこんなにも人が集まらないとは思わなかった」わたしの情けない声が木霊する。
「仕方ないね、新規の冒険者ってあまりいないから、みんなどこかのギルドに入っているんだよ」と夜和斗。
このままでは世界一のギルドなんて夢のまた夢だ。
「じゃあヘッドハンティングしましょうか」
「無理だよ、本部の借金があと七千億あるからさ」
「三千億返済したのよ? わたしのギルド凄いじゃない!」
「いや、まだ七千億残っているし」
「借金があるなんて言わなきゃいいのよ!」
そんなことを言うわたしは頭が良いだろう――いいや、この考え方だと闇ギルドに間違われそうね。
「借金七千億ありますけど、どうかこのギルドにはいってください!」
ただし、マヒトの勧誘の仕方がダメだった。
「こらマヒト! 借金があるなんて言わないの!」
「え、でももう広まっちゃってるよ。おまけになんか変な噂が広まっちゃっているし」
変な噂……何かしら。
「ゼロのギルドって人間のペットがいるらしいぜ」「マジかよ、どんなプレイ?」「あの日堂知渡子様が人間のペットを椅子代わりにしているとか」
それ噂と言うよりほぼ事実じゃない! わたしなんてことしているの。いやいや待て、落ち着け、夜和斗を椅子代わりにするなんてしてないぞ。
そんなことを考えているわたしに、
「あの」
「なに? ナンパならお断りよ!」
「いや、おれこのギルドに入りたいです」
と言って現れた背丈の高い男。
男か、どうしようかしら、正直男は要らないのよね。もしかしてわたしに踏まれたい系男子? そんなのが来たら大変よ。
「ロウといいます」
「冒険者ランクは?」
「中級です」
あらまあ、こんなところにソロの中級がいたなんて不幸なヒトね。
「役職は? 火力系?」
火力は要らないわよ、わたしひとりで十二分あるから。
「ヒーラーです」
『おお!』
ほうほう、ならば言うことは一つ。
「よろしい、ようこそゼロへ」
事の発端はこのヒーラーを仲間に入れたことから始まる。