50ストーキング? いえ観察です
マヒト視点
あの日――カエル女と戦った日――から夜和斗の様子がおかしい。
考えるようなしぐさをしたり、ため息をついたり、禿げ散らかるくらいの勢いで頭を掻いたりと、なんか気になります。
なのでわたしことマヒトは夜和斗をストーキング……いや観察をしてみることにしたのです。
「夜和斗どうしたのかしら? バカのくせにあんな深刻な顔して」
そしてなぜか知渡子もいるこの状況は何でしょう。
今の夜和斗に違和感を覚えたのは知渡子も同じだったようだ。
「あ、歩きだしましたよ。追ってみましょう」
と、夜和斗の行先はアイテムショップだった。
「兄ちゃんどれにする?」
「頭に良い薬とかありますか?」
頭? やっぱり最近ハゲ始めたのだろうか?
「頭に良い? 頭でも打ったのかしら?」
「いや、たぶん頭皮的な感じだよ、たぶんね」
「ハゲ? ハゲになっちゃうの? 夜和斗が? あのバカが? あり得ないわね」
「若ハゲって言っても若すぎるよね」
「仕方ないわよ。いつもわたしにこき使われてストレスたまらないわけないし」
「酷いよ知渡子、本当にツルツルになったらどうするの」
「それでもいいんじゃない?」
あ、また夜和斗がどこか行く。
「精神相談所ね」
「何それ?」
「精神的におかしくなった人が行く相談所のことよ」
夜和斗大丈夫かな? もしかして本当に危ない病気に罹っていたりする?
「もうちょっと近づいてみましょう」
という知渡子の提案にわたしは乗った。
「ええと、最近声が聞こえるという現象に悩まされていると?」
「はい、なんか頭の中で囁かれていて、それがものすごくうるさいんです」
「うーん、ちょっとお薬出しておきますね」
「ありがとうございます」
声が聞こえる? もしかしてわたしが夜な夜な夜和斗のところに行って「夜和斗ラブ」って言っているのバレた? いいや、落ち着けマヒト、聞かれてないぞ、絶対に聞かれてない。
「声ねぇ。わたしがガミガミ言いすぎて頭おかしくなったのかしら?」
いや、たぶんわたしの所為だよ知渡子。でも言えない、言ったらどうなるのか分からない。
「はぁ」と、夜和斗はため息を吐いた。
「なんか悩み事かな?」
「悩むような脳みそ持っているのかしら?」
「知渡子失礼だよ、夜和斗も悩む時くらいあるよ」
たぶんある、あのポケーっとした顔でも悩む時くらいあると思う。
「お」と夜和斗はおなかを抑えた。
『お?』
「お腹すいたなぁ」
いつもの夜和斗だ。大丈夫大丈夫。