45地下探索
夜和斗視点
町長に頼まれ、水脈のある地下へ向かったぼくたち。
地下は寒いしおまけに迷路のような場所だった。
渡された地下マップを見てもあまりピンとこない。
「アンチチート発動! おりゃあ! どりゃあ!」
と、知渡子はぼくの貸したナイフでモンスターを倒した。
こんな地下で属性チートを使ったら壁が崩れて全滅する。それに狭い通路だから知渡子の薙刀は使えない。
「まったく、薙刀を振れない通路って不便ね」
「そうだね、ところどころ大きく掘ってある空間があるけどなかなかに大変だね。それにモンスターが出るってことは何かしら魔王のチートが使われているのかも」
ここまで来るまでに白骨化した人間の骨がいくつも転がっていた。たぶんぼくたちと同じく地下へ降りた冒険者のものだろう。
アンチチートがあるからこそ戦えるけれど、もしアンチチートが無かったらモンスターにやられかねない。地下は知渡子がいなかったら超えられない難所とも言える。
「ここのモンスター強いわよ。さっきマヒトに研いでもらったナイフがもうボロボロ」
と、ナイフをマヒトに渡す。
《ナイフ:耐久力110 攻撃力:50 スキル:俊敏+100% 攻撃速度+100%》
それを見たマヒトはナイフを研ぎ始めた。
ぼくの刀もここじゃあ扱いづらい。どんどん狭くなっていくしナイフに持ち替えよう。
と、ぼくたちは地下を進む。
またモンスターとの戦闘、そして行き止まり。
「ちょっと夜和斗! あんたマップ読めるの?」
「ごめん」
正直言ってこのマップは読めなかった。
「ちょっと貸してみなさい! こっちに行きましょう」
「さっきそっち行ったよ」とマヒト。
この中で一番マップを読めるのがマヒトだと分かった瞬間だ。
「じゃあこっちに行きましょう!」
知渡子のテンションの高さについていくのは疲れる。
「一回ポチに走らせてみましょう!」
「え! 危ないよ! モンスターもいるし」
「ワン! ワン!」
「それもそうね……ごめんなさい」
とか言ってると水の音が聞こえた。
そのあとに「ゲロゲロ」という声が聞こえる。
「ははーん、あのデカいカエルみたいなモンスターが水を枯渇させていたのね」
知渡子は言うと切りかかろうとした。
「ああ、わたしの可愛いカエルたち、さあもっと大きくなりなさい」
と、そこに現れたのは見知らぬ女モブキャラだった。
「あいつ、モンスターを飼育しているのね!」
「テイマーなの?」
「いや、モンスターテイマーかもしれない」
聞いたことがある。モンスターを手懐けて自分の思うがままに操作する人間がいると。
「関係ないわ! 何があろうとモンスターは悪、勧善懲悪よ!」
知渡子はモンスターに切りかかった。
「ゲロゲロ!」
「ああ、わたしの可愛いカエルちゃんに何をするの!」
「モンスターを手懐けることは犯罪よ!」
「わたしはモンスターテイマーなの! モンスターを飼育して何がいけないの!」
「悪いから悪いって言ってるんじゃない。それにモンスターを飼育するために町の水を枯渇させたでしょ! 死刑よ!」
えぇ死刑!? そこまでしなくてもいいじゃない?
「あんた、清浄チート教団とか言う頭のおかしい教団の奴でしょ」
「清浄チート教団? わたしはケンタテだ! あんな汚らわしい人種と一緒にしないでもらえる」
「ならどうして教団のローブを着ているの? スパイ活動?」
「いいえ、このローブは教団側の人間だと思われるように着ているの」
「はぁ? つまり教団に所属している者として見られたいわけ?」
「そう、全ては世界浄化のために」
と、女は自ら大カエルの餌となった。
「モンスターと人間の融合――それこそが正常であり清浄なのよ!」
女とカエルは融合を成した。
「はぁ? どうなってんのよ! 夜和斗なんか知らない?」
「ゲロへへへ、これこそが清浄への近道」とカエル女。
「初めて見るよ、こんな現象、チートでもない。本当に融合しているんだ」
人間とモンスターが融合してしゃべれるようになる? なんだそれ、聞いたことがない。
カエル女は知渡子に攻撃をしかけた。
「ぐっ」知渡子は受け止めたが、ナイフが折れてしまう。
「こんにゃろー! アンチチート発動!」
と、知渡子はアンチチートを使った――しかしカエル女の融合は解けない。
カエル女はまた知渡子を狙って攻撃をしてくる。
「どうなってんのよ!」
「チートじゃないんだ!」ぼくは続けて「ここは一旦退こう!」
「チッ、しょうがないわねぇ!」知渡子は退いた。
一体どうなっているんだ?