44次の冒険へ
夜和斗視点
「暑いわねぇ……どうにかならないのかしら」
「仕方ないよ、みんな条件は同じなんだから」
「次、日影があったら休もうよ」
導きの石の光を頼りに森林地帯を抜けたぼくたちは、砂漠地帯へと足を踏み入れた。
始まりの町からどのくらい歩いたのか分からない。
そういえば、最初の町のギルドは本部として、次の町には支部を建てるだとか知渡子は言っていたけど、借金は残り九千億だ。支部を建てるだけの資金はない。
世界一のギルドを目指す。そして魔王を倒す。知渡子の夢は大きい。いいや、ぼくも魔王を倒すのだから大きい夢を持っていると言えるだろう。
「中級冒険者ってこの暑さ耐えるスキル持ってる奴らでしょ? 正直わたしでもキツイ」
今のぼくたちは中級冒険者だ。ギルドランクは相変わらず下の方にいるけれど、パーティーランクはうなぎ登りだ。
「ポチ、暑くない? 大丈夫?」
「ワン!」
ポチはどうやらへっちゃららしい。暑さ対策寒さ対策のスキルが発動しているようだ。
と、日影で休むこと五分。
「この乾燥地帯じゃわたしの水チートも氷チートも発動できない。てかチートなのにどうして縛られなくちゃならないのよ!」
確かにチートなのにチート縛りをしてくる地帯とはどういうことだ? 土地がチートを持っているとしか考えられない。
チートをチートで無効化できるのかもしれない。ならばアンチチートを土地へ向けて使えばいいのでは?
そう、試しにやってみたけど無理だった。
この暑さは耐えるしかない。これが中級冒険者の最初の試練だ。
「もう少しで町が見えてくるから頑張ろう」とぼくはマップを見ながら言う。
「やっと町か。水くらい置いてあるんでしょうね?」
「砂漠地帯で繁栄している町なら水くらいあると思うよ」
そしてぼくたちはまた歩き出す。
「昼間に移動するもんじゃないわね」
「あ、知渡子! 町が見えたよ!」とマヒト。
「どうせまた蜃気楼でしょ、わたしは期待してないわ。またぬか喜びして体力使ってられないわよ」
「いいや知渡子、町だよ」とぼくは指を差しながら言う。
「やったわ! 今度こそ本物の町よ!」
知渡子は走り出した。
町の門へ着けば、
「ようこそようこそエビバディようこそ!」
なんかそのフレーズどこかで聞いたような? 始まりの町のマスさんに似ているな。
「冒険者の方ですよね?」
「あ、はい」
「わたくしこの町の町長のチョウ・チョウ・チョウと申します。町の人からはチョウと呼ばれております」
「あ、どうもチョウさん」
「それで、早速依頼をしたいのですが……」
「はい、その依頼ってどんなものですか?」
「ここではなんですし、町へ入ってくださいな」
とチョウさんに高級そうな店屋に連れていかれた。
「水があるわ!」
「どうぞどうぞ、沢山お飲みになってくださいな」
『ありがとうございます』とぼくとマヒト。
水が出てくるなりぼくたちは飲み干した。
「それで、依頼とは?」
「それなのですが……我々の町は今水不足でして」
えぇ、それなのにぼくたちに水を無料で?
「いつからですか?」
「一カ月前からになります。急に水が湧いてこなくなり、この町の冒険者に水脈のある地下へと行って原因を調査してと頼んだのですが、そのまま冒険者は帰ってこずでして……」
ほうほう、それはモンスターの仕業かもしれない。
「それで、どんどん水が減っていき、川の水も枯れ今ではなんとか水の湧いている井戸の水と貿易関係を結んでいる町だけが唯一水を手に入れる手段になりました」
「どうかこの町をお助けください」
これだけ世話になっておいて断るはずがない。
「任せなさい! わたしたちが地下へ行って原因を突き止めてくるわ!」