43凱旋
夜和斗視点
「マヒト、起きて。マヒトってば」
「起きなさいマヒト!」
と、マヒトは飛び起きた。
「あれ? 夜和斗と知渡子……」
「大丈夫? ケガとかしなかった?」
「え、わたしたちみんな死んじゃったの?」
冗談を言えるくらいなら大丈夫だろう。
「死んでないわよ! まったく、心配かけさせないでよ」
知渡子はマヒトを抱きしめた。相当心配していたけど、無事って分かってよかったね。
「あれ? フェンリルは?」
『フェンリル?』と、ぼくと知渡子は首を傾げる。
フェンリルってあの神殺しをしたフェンリルかな?
ぼくと知渡子はマヒトから話を聞いた。
「ほう、それでフェンリルがこの導きの石をくれたんだね」
「夢でも見てたんじゃないの?」
「あはは……そう言われると自信なくなる」
「まあ何でもいいけど、ギルドクエストはクリアしたわよ! これで次の冒険の舞台へと進めるわ!」
「え、どうやってクリアしたの?」とマヒト。
「え? マヒトがコア的な物を壊してくれたんじゃないの?」
「わたしはその導きの石を貰っただけだよ、夢かもしれないけど」
どうやらマヒトは何もしていないらしい。じゃあモンスターのリスポーンが止まったのはなぜだ?
ギルクエをクリアしたのに謎は深まるばかりだ。
「ギルドクエストクリアおめでとうございます」
と、謎を纏っていた空気に謎のマスニさんが登場した。平原地帯までくるギルドマスターってなんだよ。このヒトNPCか何かか?
「ギルドクエストをクリアなさるお方は何十年ぶりでしょうか……わたくしマスニは感動しております」
大きく言いすぎだ。迷いの森のマヨイさんもクリアしているって言ってたし、そんな昔のことじゃないだろう。
「モンスター無限湧きってふざけた依頼クエストだったわよ!」
「何回も死にそうになったよね」
「でも最後は完全勝利だね」
と、町に戻れば、
「ヘイユー、センキューセンキューエビダディセンキュー」
そこに現れたのは隣のギルドのマスさんだった。
「ユーたちやってくれたんだってね、ギルクエ。今日はレッツらパーティーだぜ、イエェェー!」
マスさんは変なヒトだった。
「ありがとうゼロ!」「ゼロ! やってくれると思ったぜ!」『ゼロ! ゼロ! ゼロ!』
と、気が付けば町の人たちがぼくたちの凱旋を祝ってくれた。
「これで我々の町にも他国の輸入品が沢山入るようになります。魔王軍に占領された領土を浄化してくれてありがとう」
「え!? ここの町魔王に占領されてたの?」
「いえいえ、この町ではなく森です」
「ああ、森かぁ」
「チートを使い領土を広げる、それまさにチーターの如き働き。我々ギルド一同感謝いたします」
これで隣国との貿易ができるようになるらしい。
これで一歩魔王に近づいたんだ。
終わり良ければすべて良し。
いやいや、今回のギルクエで怪我人出なかったから始まりも終わりもよかったね。
うん、よかったよかった。
お父さんお母さん、夜和斗は頑張っています。
おじいちゃんおばあちゃん、ぼくはあなたたちのような冒険者になります。