42伝説の怪物
マヒト視点
わたくしマヒトは非常に危険な任務を託されました。死に至る任務です。正直言ってやりたくないです。
モンスターひしめく草原地帯を進むなんて怖すぎます。と言うかわたし鍛冶師なんだけど、どうして冒険しなくちゃいけないの? こんなの冒険じゃなくて危険なだけだよ。
「グルルルル」
やばい、動くなわたし、目を合わせるなわたし、敵意を見せるなわたし。
そうやってビビりながら、抜き足差し足でモンスターのリスポーン地点へと向かっていた。
到着。とわたしは木にタッチした。
ここがモンスターのリスポーン地点か、どうやってモンスターが生まれるんだろ。
わたしは興味があったので見てみる。
するとポワン、ポワンと次々に生まれてくるではないか。
ひえー、あの量をいつもさばいていたのか……夜和斗と知渡子凄すぎる。
モンスターを大量に生み出す装置か何かがあるはずだ、そう思って探し回ってみたけれど何もない。
どうしよう、このまま戻っても何しに来たか分からない。
「はぁ」とため息を吐いたその時、
「ほう、興味深いな。小娘がギルドクエストをクリアするとは思わなんだ」
と、次に現れたモンスターにわたしは腰を抜かすことになる。
「大災禍の日よりここまで、わたしに辿り着いたのは英雄と呼ばれる者たちだけだった。なのに今日で来たのは小娘ひとり。笑わせてくれる」
――神殺しの獣フェンリルだ。
伝説書に書かれているモンスターがわたしの目の前にいる。伝説書に描かれている姿がそのままある。
「清浄チート教団やらケンタテやらと派閥が増える昨今、その今にわたしに辿り着く者がいるとはな……喰い殺してやりたいところだが、そなたは無知だ」
あ、わたし死んだわ。これはもう終わった。短い人生をありがとう。
お父さんお母さんわたしそっちに行くから待っていて。
知渡子ともっと仲良くなりたかったなぁ。
夜和斗とラブラブしたかったなぁ。
「まぁよい、持っていけ小娘。これがあれば迷いの森を抜けられる」
《導きの石》
フェンリルからもらったのは宝石のような石だった。
「人間は我々を忘れないだろう、そして穢れた神もまた我々を忘れないだろう。モンスター共による浄化の時は近い、見ているがいい神々よ! 我々の復讐劇を!」
と、牙をむくフェンリル。
わたしは気絶したのだろう。
そこからの記憶は何もない。