32鍛冶師の夢
夜和斗視点
ぼくはマヒトについて訊きたいことがあった。
「マヒトって何歳?」
「十六だよ」
「あ、じゃあぼくの方がお兄さんだ。だってぼく十七」
「え、夜和斗は十五歳くらいかと思ってた」
あはは……年下にみられていたのか。もしかして頭脳的に?
「マヒトは夢って持っている?」
「夢?」
「そう、例えば最高の鍛冶師になるとか」
「……ぼくは――【魔王を倒す武器を打ちたい】」
マヒトの目は輝いていた。少年や少女のような輝きをしていた。
「魔王を倒す武器を打ちたいか。それがマヒトの夢なんだね」
「うん、ぼくは鍛冶師だから……戦いには加われないと思うから、その代わりに武器を打ちたいって」
マヒトは素直な子だ。十六になったら普通は恥ずかしくて夢なんて語れないだろう。でもマヒトは素直に話てくれた。
「ぼくだけの夢じゃないんだ、みんな夢の話をしなくなったけど、鍛冶師はみんな魔王を倒す武器を打ちたいって思っているんだ」
「そっか、ぼくの夢は魔王を倒すことなんだ」
「え、そうなの?」
「うん、幼い頃からの夢なんだ。十七になってもまだ諦めきれないって、それで色々とあって知渡子と冒険に出た」
「夜和斗は知渡子のことが好きなの?」
「え!?」
いや、どうだろう……知渡子は性格キツイからなぁ。でも友達としては好きかな。
「まぁまぁかな?」
「そっか、よかった」
え、何がよかったんだ? ああ、パーティーの仲が良くてか。
「あ、そうそう、ゼロってパーティー名かっこいいと思うよ」
と、マヒトは急に話題を変えてきた。
「そうだよね! かっこいいよね! でも中二病だとか周りから言われるんだ。知渡子は気にしなくていいとか言うけど……なんか中二病って言葉がイメージ悪い感じ」
「ぼくは気に入ってますよ、ゼロ」
「ありがとうそう言ってもらえると自信が持てるよ」
「よっしゃー!」と急に大声を上げる知渡子。
「スライムを倒したわ! わたしってやっぱりできる子なのよ!」
なんかひとりで盛り上がっているようだ。
「知渡子ー、組手しようよ。ね、マヒトも組手やろう」
「え、ぼくはその」
「いいから、仲間ならお互いを高め合わねばならぬよ」
「じゃあ、やろうかな……」
ただの会話だ。不自然なんて無くて、ただただ友達とのたわいのない会話。
なのにマヒト、どうして話してくれなかったんだ……