31鉄打ちて
知渡子視点
「で、結局パーティーに入りたい女鍛冶師は見つからず、女の子みたいな男の子を連れてきたってわけね」
「はい、ごめんなさい」
わたしが夜和斗に言うと、夜和斗は申し訳なさそうにした。
「まぁいいわ、それで、マヒト」
「はい」
と、わたしは怪訝な顔でマヒトを凝視した。
「あの、なにか?」
うーん、なんかこの子どこかで見たような? まあいいか。
「わたしがここのギルドのボス、知渡子よ」
「よ、よろしくお願いします、知渡子さん」
「こちらこそよろしく、マヒト」
わたしとマヒトは握手をした。やだ、わたしの手よりすべすべ。
「それで、わたしたちのパーティーに入りたいってことでいいのよね?」
「はい!」
「そう、なら最初の仕事を与えるわ」とわたしは薙刀を取り出して、「わたしの薙刀の耐久力を元に戻してくれない?」
「あ――はい!」
「ただし――チートを使わないで」
これで無理と答えたら不合格としよう。この先魔王の幹部陣を倒すと考えると、どんな場所でも武器のメンテナンスは必要不可欠。わたしたちの冒険について来れる器ならこの場を乗り切れて当然。
《薙刀:耐久力100 攻撃力100 付与スキル:攻撃力1%上昇、攻撃範囲100%拡大》
わたしの薙刀は結構ボロボロになっている。このオンボロ武器をチート無しでどこまで直せるか。それを見させてもらう。
「はい! やらせてください!」と、マヒトは鍛冶道具を取り出した。
「へー、火金槌を持ってるんだ。これがあればどこでも火要らずだね」
「あ、はい、商売道具なので、それに、父親の形見ですから」
どうやらマヒトの両親も大災禍で亡くなったらしい。
(大災禍か。あの災厄の所為で両親を失った子供がどれだけ増えたのだか)
と、しばらく鉄を打つ音と削るような音が聞こえた。
「できました」
《薙刀:耐久力2000 攻撃力1000 付与スキル:攻撃力10%上昇、攻撃範囲100%拡大》
新品で買った時と同じ!?
「凄いわマヒト! 合格点以上よ!」
「あははっ」とマヒトは照れくさそうにする。
「よし! それじゃあ森林地帯か草原地帯で試し切りしてくる」
「行ってらっしゃい」と夜和斗。
「バカじゃなの? あなたも一緒に行くのよ」
「え、ぼくも?」
「当たり前でしょ、わたしのペットなんだから」
「え、夜和斗さんって知渡子さんのペットなんですか?」
「そうよ」
「――いや違うよ!」
うるさいわねぇ、そんなことどうでもいいじゃない。
「あ、そうそうマヒト、わたしたちのことはさん付けしなくていいわよ」
「え……じゃあ、夜和斗、知渡子」
「そう、それでいい」
マヒトがいれば冒険がより一層楽しくなる――そう思っていたのに。