27休暇が欲しい? じゃあ――
夜和斗視点
ぼく、世輪背川夜和斗は魔王のような知渡子に話があった。
「休みが欲しい?」と知渡子。
「うん、この冒険者ギルドは働きすぎているから、みんなに休みが欲しいと思ったんだけど」
「却下」
「えぇ、どうして?」
「疲れてないでしょ」
「いや、進歩のない冒険やギルドクエストで疲れないはずないよ」
ぼくこと、世輪背川夜和斗は日堂知渡子に休みを要求していた。
「ギルドの借金はあと九千九百億残っているのよ、やっと百億返したの!」
「そのせいでここの冒険者ギルドのヒトがカラダ壊しちゃってるんだけど、しかも冒険者を辞めたいって言ってるヒトいるしさ、肉体的にも精神的にも危険だよ」
「辞めてどうするのよ、しょぼい小銭稼ぎに戻ってもどうせ出戻りよ」
「何でもいいけど、休みは必要だよ」
「冒険者でもないわたしのペットの分際でよく言うわね」
またペットか。いつになったらぼくの人権は復権するんだ。
「そうか、いいだろ知渡子。ぼくと休みをかけた勝負だ!」
「勝負? そんなことやるくらいなら自由探索に行った方がいいわ」
「ぼくに負けるのが怖いんだろ。昔みたいに負けて泣きたくないんだろ」
「いいじゃない! 受けて立つわ!」
「夜和斗、絶対に勝ってくれ!」「頼む夜和斗、お前だけが頼りだ!」「このギルドの魔王を倒してくれ!」「ペット万歳!」
また視線が痛い。というか最後になんか悪口聞こえたような気がするんだけど、気のせいだよね。
「それで、勝負はどうするの? 早食い? それとも前みたいに腕相撲? それともガチンコバトル? わたしは何でもいいわよ」と知渡子。
ほうほう、何でもいい? じゃあぼくの好きにさせてもらおう。
「今回の勝負の内容は――」
「――チートを使わないでより多くのモンスターを倒した方が勝ち」
「いいわよ、でも条件を付けくわえさせてもらうわ」
「いいだろう。その条件とは……」
「条件は――ポイント制よ」
「つまり、ゴブリンを倒したら一ポイント、スライムを倒したら十ポイントとか?」
「そうよ」
「いい条件だ」
こうして知渡子との勝負は始まった。
休みを懸けた一世一代の大仕事だ。
ここで知渡子を倒さなきゃ魔王を倒すなんて夢のまた夢だ。
お父さんお母さん、ぼくの人権はどこにかいってしまったけど、ぼくは元気に生きています。
おじいちゃんおばあちゃん、世界はどんな色をしていたの?