26ギルドクエスト
知渡子視点
前線で耐えているのはわたしたちのパーティーだけになってしまった。
モンスターのリスポーンが早い。狩っても狩っても次から次に――
「――しつこいのよ!」
と、わたしは暴風チートで敵を一掃した。しかしまたモンスターは生まれる。
流石にひとりでこの量をさばくとなると疲れる。チートを使っているのに疲れるなんて初めて。
「知渡子! ポーションを飲んでおけ!」
わたしは夜和斗に命令された。
「うっさいわね! そのくらい分かっているわよ!」
チートも使っていないのにどうして夜和斗程度がピンピンしてるのよ。無限持久力チートのポチが疲れないのは分かるけど、なんであいつは疲れないの?
と、ポチはわたしにポーションを運んできてくれた。
「ありがとうポチ、他のみんなにもポーションを運んで」
「ワン!」
「ワン! ワンワン!」ポチは楽しそうに走っている。
このギルドクエストでポチは引っ張りだこだ。
とそんなことを考えていると、わたしの横をモンスターがすり抜けていった。わたしたちの後ろには後退を余儀なくされた負傷者がいる。
「ヤバ!」
その時、夜和斗はカバーに入った。
「ナイス夜和斗!」
「知渡子! 次が来る! チートを!」
「分かってるって!」
ギルドに帰ってきたわたしたちは反省会をすることになった。
「知渡子、前に出すぎているよ」
「はぁ?」
「前線に出れば出るほどモンスターのリスポーンは早まる、流石のチートでもさばき切れなかったでしょ」
うっ、確かに夜和斗の言う通りだ。こんな最初の町のしかも初級レベルの草原エリアで苦戦するなんて思わなかった。中級レベルじゃわたしは死んでいた。
何も言い返せない。初級レベルならわたしひとりでもやれると思っていた。
「――それでも知渡子は前線に出たいんだよね?」
夜和斗はわたしのことを分かってくれている。
「そりゃあそうよ。魔王を倒すならあんな量で苦戦していられないもの」
冒険者なのに冒険しないでクエストばかりだし、何も進んでいない。
ああもう、わたしの自尊心がどんどん汚されていく。
「リスポーン狩りはぼくたちじゃまだ早い」
「じゃあどうするのよ! チートを使っても抑えきれないって普通じゃないわ!」
「ぼくたちはゲームマスターたる魔王の策略に踊らされているんだ。たぶんモンスターのリスポーンを速めているコアみたいなものがあるんじゃないかな?」
「はぁ?」
訳わかんないこと言わないでよ。ギルドクエストから夜和斗変よ。急に頼もしくなったり、急に命令してきたり、もしかして夜和斗が魔王だったりする?
「だっておかしいじゃないか、ここは最弱の町なのに魔王軍の侵攻を食い止められている」
「ゲームの話じゃなくて現実の話をしてくれるかしら」
「いいや、魔王はこのゲームを楽しんでいるんだ。簡単にゲームをクリアしてしまったらつまらないだろ?」
そうだけど、わたしたちは命懸けで戦っているんだし、ゲームなんかと一緒にしないでほしい。
「話が逸れたけど、夜和斗の意見は分かったわ。次のギルクエでコアを探してみましょう」
「知渡子の反省は?」
「さっき言われたことを見直してみるわ」
わたしだって反省点を素直に受け入れることはある。わたしはツンドラでもツンツンでもない。
「じゃあ、今日のところは休もうか」
「そうね、ポチも珍しく眠そうだし――あ、冒険書に今日もいろいろと書いといてね」
「はいはい」
わたしは宿屋に入った。