25ナンパ?
「ギルドクエストに参加するパーティーの方、もうそろそろ受付終了なのでお早めに!」と、ギルド受付人。
ギルドクエストとは、ギルドに依頼されたクエストを消化するイベントである。また、他のギルドの者と人脈を作る――新たな仲間との出会いの場でもある。
「自由探索とは違って目標が設定されているのね」
「依頼クエストだからね、田畑を荒らすモンスターくらいしか遭遇しないけど、たぶん自由探索よりは稼げるよ」
「お金よりも鍛冶師よ。どこかに良い腕の鍛冶師はいないかしら?」
鍛冶師か……と、ぼくは辺りを見回した。
《名前:かずお 職業:鍛冶師》
「あ、あの人鍛冶師だ。ひとりっぽいし話しかけてみない?」
「嫌よ、男はわたしのパーティーに必要ない」
「え? ぼく男だけど」
「はぁ? あんたバカぁ? あなたはペットでしょ。性別なんてあったの?」
ペットかよ、そういえば首輪してたなぼく。いやそうじゃなくて男だよ。
「女の子で鍛冶師ってそうそういないけど。というか女の子の冒険者なんて知渡子くらいじゃないか」
「女の子の冒険者なら他にもいるわよ! そんなことどうでもいいから早く人脈作ってきなさいよ!」
と、ぼくはお尻をド突かれた。
なんか知渡子昔より狂暴化してないか? ぼくってそんなに機嫌悪くなることしてるの?
ぼくは探し回った。女の子の鍛冶師を求めて探し回った。けど、いなかった。
「それではみなさん、ギルドクエスト開始です!」
え、もう開始? 男でも女でもいいから鍛冶師と人脈作らなきゃ知渡子にどやされる。
「あ、あの――」
と、ぼくは気弱そうな鍛冶師に話しかけた。
「は、はい、なんでしょうか?」
「ぼく夜和斗って言います、よろしくお願いします」
「は、はぁ、ぼくはマヒトと言います」
「よろしくマヒト君」
「え、は、よろしくです」
なんか熱感がぼくと真逆なんだけどどうしよう。なんかしらないけどキモがられているよねぼく。
「それで、なんだけど、ぼくとパーティーとか組んでみないかな? 試しにとか……今日一日契約みたいな感じで。その、気に入らなかったらいいから試しにさ」
ヤバい、なんかナンパしているみたいな緊張感あるんだけど。てかキモくないかぼく? というかナンパなんてしたことないから緊張感あるのか分からねぇ。
「あ、あー……ごめんなさい、ぼく他のパーティーと約束があるので」
と、マヒト君は駆けていった。
ありゃま、これは知渡子に怒られる。ペットの分際で人脈すら作れないなんてバカなの? って怒られる。
「ペットの分際で何してるのよ!」
ほら、やっぱり言われた。
「だったら知渡子も手伝ってよ」
「手伝ってやろうと思ったわよ、でもわたしが歩こうとする度に鍛冶師の男に話しかけられて一歩も動けなかったの」
流石女冒険者知渡子、その美貌もチート級か……性格悪いけど。
「鍛冶師はもういいわ、ギルクエのある草原まで行きましょう」
仲間ってどうやって集めればいいんだ……。