22最初の冒険
ぼくたちは森林地帯へとやってきた。初級冒険者はまずここに来ると良いとマスニさんに言われたからだ。
「いいこと! 狙うのは大物よ! そこら辺のモブモンスターを狩っていても切りがないわ」
一発で大金を手に入れるには手配書のモンスターを狩るのが一番だが――そう簡単に手配書のモンスターは見つからない。
「知渡子、今回はモブモンスターを狩ろうよ、モブモンスターでチマチマ倒して小銭を稼いで、運が良かったら手配書のモンスターと遭遇できる、これが一番いい方法だと思う」
「うっさいわね! わたしは冒険者よ! 冒険しなくちゃ何者でもないの! もっと奥を探すわよ!」
「それはそうだけど」
チートを使わないで攻略するならチマチマやってた方がいいと思うけど。お金を貯めても経験値溜まらないんじゃ魔王に勝てないよ。
「だけど何よ!」
「経験も必要だよ、すぐにボス級なんかと出会えないよ」
「ボス級でも何級でも危なくなったら逃げればいいじゃない! テレポートチートで逃げれるわよ! わたしのテレポートの座標計算力舐めないで!」
もうなんかどうでもよくなってきたな。
「まあいいや、知渡子にまかせるよ」
「ならさっさと歩きなさい!」
ツンツンツンツンって、ほんと疲れないのかな。
ぼくたちは森林地帯の奥へ奥へと歩みを進めた。
もう日が暮れてきた、このままだと野宿になる。
「知渡子、今日は帰ろう。帰っている途中でモブモンスターを狩って今日の宿泊代を稼ごう」
「ううぅ~、仕方ないわねぇ」
やっとぼくの言うことに耳を傾けてくれた。
「ウゲゲ! ウゲゲ!」と、ゴブリンの群れが現れた。
「もう、しつこいわねぇ。火炎チートで死になさいモブ共!」
流石知渡子のチートだ。ゴブリンの群れを一掃してしまった。
「これで宿代は稼げたよ」
「ふん!」
知渡子は大物モンスターに遭遇できなかったことを拗ねているようだった。
そんなことがあって冒険者ギルドに戻ると……
「もう! あれだけ探して見つからないってどうなってんのよ!」
「チートが当たり前の世界でチートを使わないのは罰当たりなのかな?」
「チートを強制的に使わされるなんてまるで魔王に支配されているみたいじゃない!」
そうだね、たぶん支配されているんだよ。
「この世界の支配者は魔王だよ、だから冒険者になれる器にはルートが用意されているんだと思う」
「はぁ? 何よそれ」
「こうじゃないと進めない、みたいなモノが用意されているんだ。ゲームみたいにさ」
「そんなのバグで潜り抜ければいいじゃない」
「それをしたらチーターと同じ扱いをされる――つまり魔王と同じだ」
「ほーん、わたしたちは冒険者、だからこの世界の設計者である魔王とは違う方法で世界を攻略しなくちゃいけないってことね」
「清浄チート教団の序列も何かしらの意味があるとしたら、ぼくたちはゆっくりと進むしかないんじゃないかな?」
ゆっくりと進んで、ゆっくりと序列を上げる。
「一発逆転はチートに頼るけど、進んでいる道だけはチートに頼れない」とぼく。
反チート組織のアンチチートの件もあるし、知渡子が何かしら鍵を握っているのだと思う。
「まあいいわ、冒険書に今日の出来事を記載するの忘れないでね」
「えぇ、ぼくがやるの?」
「当たり前じゃない、わたしは日堂知渡子よ。ペットのあんたがやらないなら他に誰がやるの?」
雑用ならお茶の子さいさいだけど、冒険者の付き人になってもまだ雑用係か。
お父さんお母さん、夜和斗は元気に生きています。
おじいちゃんおばあちゃん、ふたりはどうやって冒険者になったの?