21世界一の冒険者ギルドへ
何でも言うことを聞く――とは言ったものの、知渡子の要求は簡単なものだった。
「普通の冒険者になりなさい!」
彼女の言う普通の冒険者とは、モンスターを狩ったり、賞金首を倒したり、魔王軍の侵攻を止めたり、魔王軍に落とされた村や町を取り戻すのが普通の冒険者らしい。
「あんたらバカぁ? 冒険者って仕事してるくせに稼げないってバカなの? やったらやっただけ、いいえやったらそのやった分以上にお金貰える夢のある仕事よ! 冒険者試験にも合格して冒険者になったんだったらウダウダ言ってないで英雄になってみなさいよ。このバカ共!」
そんな風に説教されたギルドの冒険者は、ただただ言うことを聞くしかなかった。ここら辺のギルド一強いくまぁを倒したなら当然とも言える。
「よかったね知渡子」
「はぁ? わたしにとってはお茶の子さいさいよ」
「え、でもぼくも頑張ったよね」
「なに? なでなでしてほしいの? 首輪をしている分際でわたしと対等に接したいわけ?」
でたよ、知渡子のイジメだ。ぼくをイジメて楽しんでいるんだ。
「してほしくないよ、対等には接してほしいけど。そんなことより、次はどうするの? ここの冒険者ギルドまともになっちゃったけど、隣の冒険者ギルドに移るの?」
「いいえ、移らないわよ。なんたってわたしはここのギルドの支配者になったのよ。情報も無料でもらえるようマスニさんを脅したし大丈夫」
やってること大丈夫じゃないけどね。でも知渡子が良いならそれでいいか。
「それで、まずはお金よ。ここの冒険者ギルド借金してばかりいるから魔王軍の情報すら出回らないんだって」
「なら、それこそ他の冒険者ギルドに行った方がいいんじゃ?」
「バカねぇ。言ったでしょ、ここのボスはわたしよ。稼いで稼いで稼ぎまくって、こんなボロ冒険者ギルドじゃなくて、世界一の冒険者ギルドにするの! ――そうしてから魔王を倒しに行く! それでわたしは晴れて英雄になれるって計画」
「何年かかる計画?」
「そうね……わたしと夜和斗が死ぬまで?」
「それは長くなりそうだね」
『あはははっ』
ぼくたちは笑った。久しぶりだ、知渡子と笑い合うなんて本当に久しぶりだ。
「ワン!」あ、ポチも忘れてはいけないね。
これでぼくも晴れて冒険者……いや、まだまだ冒険者になるには早い。
「ほらポチ、夜和斗、最初の冒険に出発よ」
先代の方々、ぼくは冒険者になります。