17最弱の夢とこれからの冒険
ぼくの夢は魔王を倒すことだ。
魔王を倒してこの世界からチートを消すことだ。
チートが消えてなくなればもっと平等な世界になると思う。チートによる差別や環境問題が無くなるのは良いことだと思っている。
チートに使われる者も使う者もいなくなれば、世の中はもっと楽しいことで溢れてくる。
いや、個人の主観だ。チートがある今は生きやすい、チートがない世の中は生き甲斐はあるけど、生きづらい世の中になるのだろう。
「ほら夜和斗! ボーっとしてないで準備しなさいよ!」
と知渡子はぼくを急かしてきた。
せっかちな知渡子は世話になった叔母にも挨拶なしで出ていくそうだ。
知渡子の叔母さんは知渡子がいなくなって清々していると言っていたけど、本当は「寂しくなる」と泣いていた。
ほんと、ツンとしているところは叔母さんに似ている。
「まだ? わたし先に行くわよ!」
「ちょっと待ってよ! 最後にこの家とのお別れをしたいんだ!」
お父さんお母さんが残してくれた家……いや、この茅葺屋根の家は先祖代々継いできた家だ。だから最後にちゃんとお別れをしたかった。
「ぼくを雨風から凌いでくれてありがとう。昔、落書きをしてごめん。ぼくが感情を持てたのは君のおかげだ。最後に――また会おう」
そしてぼくは知渡子の歩く方へと駆け足で向かう。
冒険には極力チートを使わない。というルールを決めた。
そうでなくちゃ冒険ではなくなる。
だから、誰かを守る時にチートを使うようにすると決めた。
知渡子には最後の最後まで言わなかったけど、ぼくのチートは【知渡子無しじゃ発動できない】――これはぼくだけの秘密……ではないな、ぼくとポチと、ぼくの家だけの秘密だ。