15最強の願い
知渡子視点
わたしの前には教団の連中が現れた。
あのザコとかいう奴が教団側にチクったのだろう。わたしを前に高みの見物とは良い度胸だ。
「チートは良いぞぉ、見てみなさい、みんなに観られながらの羞恥プレイなんてたまらんだろ。考えただけでアカンことになるに決まっている」
と、清浄チート教団のヘンタイ野郎は言う。
「チートは良いぞ、チートは良いぞ、貴様のチートが欲しいぞ!」
どうやら他の奴らもヘンタイらしい。
まあ、どうでもいい。かかってこいヘンタイ共。
「領域封印」
と、わたしがアンチチートを使おうとした瞬間――出せなくなった。
「――残念ながら俺様のチートはアンチチートの完全対策だ。つまりお前のアンチチートを完全無効にする。この領域を極めるのにどれだけの時間がかかったことか……しかしここで貴様のアンチチートも終わりだ!」
わたしのアンチチートを無効化? 領域ってチートの上位互換な訳?
「アンチチートの娘を捕らえろ!」
「バカねぇ、わたしが使えるのはアンチチートだけじゃないのよ!」
「アンチチートだけじゃないのは分かっている、だから――」
と、モブ共が登場するや否やチート領域を展開させた。
『チート封印式――七常無常!』
「ぐっ!」
わたしのチートが縛られる。属性チートはもう使えない、アンチチートも領域とやらで封じられている。
詰みか。
ああ、わたしの人生って短かったな。高校二年生か。もう少し生きていたかったな。
でも、あちら側に行ったらお父さんとお母さんに会えるんだ。そっちの方がいいかも。
はぁ、夜和斗は逃げれたかしら? もし捕まって殺されてたら、天国でも地獄でも恨むわよ。
わたしこと日堂知渡子は、魔王を倒すことはできませんでした――これは良い物語になりそうだ……いいや、駄作だな。
「知渡子!」
と、光がわたしを照らした。
「どうして……」
わたしは泣きそうな顔をした。
「どうして戻ってきたのよ!」
「ぼくは英雄になりたいからだ!」
そうだ、わたし、本当は助けてほしかったんだ。
強い力を持って生まれて、強い力で誰かを助けて……強い力で誰かを傷つけてきた。
わたしは何でもひとりで出来た。
ひとりで出来ることが当たり前で、なんだか虚しかった。
何でもひとりで出来たのに、夜和斗が笑顔を教えてくれた。わたしなんかが笑っていいことを知った。
「だったら夜和斗……わたしを助けて」
「チート領域展開!」
夜和斗の生み出した領域内にすべてが飲まれてゆく。
「領域乖離――零之威光」
夜和斗の領域内は暗黒が広がっていたけど、わたしだけは光のように夜和斗の領域内を照らしていた。