12尾行
知渡子視点
夜和斗、今に見てなさい。あんたがチートを使っているところを写真に収めてやるんだから。
と、わたしはどこからか盗んだチート教団のローブを纏い燃え上っていた。
ここまでくることは簡単だ。学校を休んで夜和斗を尾行して、チート教団のローブを盗んで……まぁわたしにとっては全てが簡単なことだ。
夜和斗のやつ、チート教団なんかに入ってどうするつもり? もしかしてこのまま高飛びするとか? そんなことわたしがさせるわけないでしょ。
「お嬢さん、可愛いですねぇ。どうです? おれと一緒にチート神にお祈りするのは? それでお名前は?」
わたしは入信者にナンパされた。
邪魔よ。これじゃあ夜和斗が撮れないじゃない。
「おやおやお嬢さんここでの撮影は禁止ですよ。ここは清浄チート教団。そんな旧時代の遺物で写真を撮るなんてノンノンノン」
こいつ気持ち悪いわねぇ。何なの? 初対面の相手をこんなにも不快にさせる男ってホント何なの?
わたしは無視して夜和斗の方へ行こうとする。しかし、
「お嬢さん、お名前くらい教えてくれませんか? ぐへへ」
「御祈りの時間ですから静かに!」
と、なぜかわたしと、このキモ男は叱られた。
チッ、叱られたじゃないこのキモ男。キモい分際でわたしを巻き込むなんていい度胸してるわね。
「名前、名前、なんていうの? おれはキーモって言うんだよ」
懲りない男ねぇ。てかキーモってあんたの親が付けた名前? センスゼロというか家畜よりも家畜扱いされている名前ね。
「あんたに教える名前なんか持ってないわよ」
「そう言わずに、ぐへへへ」
キモいキモいキモいキモいキモいぃぃぃ。
と、我慢ならなかったわたしはテレポートチートを使って夜和斗の方へ近寄った。
「あっ」
わたしは夜和斗の肩にぶつかってしまった。
「大丈夫ですか? 具合でも悪くなりました?」
「ひえ、なんでもありません。ごめんなさい」と、わたしは裏声で言う。
夜和斗のやつ肩幅結構あるのね。テレポートの座標ミスるとこだったじゃない。
いつもだったら「謝りなさいよ!」 そう言ってやる所だけど今日は勘弁しといてあげるわ。
「ならよかった」
夜和斗は言う。相手がわたしだと気づいていたら絶対に「なんだ知渡子か」で会話終わるのに、こいつ涼しい顔しやがって。許さん、絶対に弱みを握ってやる。
と、わたしは夜和斗の尾行を続けた。