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雅と雅 (C)編  作者: 雅也
8/10

8話


                 8



 真由の”公開処刑”からの翌週月曜の夜のコンビニフードコートで、いつもの様にミヤとミィの姿があった。が、今日は、美沙も交じって、何か話している。



「真由、めっちゃ壊れてたなぁ....。ちょっと可哀そうだったかな?...、公開処刑ってミィは言っていたけど、実の父親の前でホントにアイツ頑張ったと思う」

「そうだね。真由もこれで、晴れて浩さんとお付き合いが出来て、長年の思いが報われたよ」

「真由ねえちゃん、可愛かったぁ~....。何度見ても、感動する、浩さんの言葉」

「美沙、お前、何回動画見たんだよ!」

「えへへ、何回見ても、いいなぁ~。何か憧れるぅ...」

「お前、何か悪い顔してるぞ」

「えぇ....、いいじゃぁん!」


 そんな3人が色々と話していると。


「あ!居た居た」

「あ!ホントだ、ホントに居た」

「あれ?真由じゃん」

「やっほ~!みんな、えへへ、思った通り居たねぇ~。ね!言ったでしょ?」

「ホントだ」(....って、3回言うの?浩二(作))


 先日の 公開処刑 の本人たちがやって来た。


「ミヤ ミィちゃん、この前はありがとう。あの後押しのお陰で、俺と真由は付き合うことになれたよ」

「ホント、あなた達のお陰よ、ミィ ミヤ」

「いやいや、浩さんが前向きになってくれてホントに良かったです」

「しかも、もう真由の事を呼び捨てで呼んでるし。もう、いきなりラブラブね」


 浩二と真由が、照れながら赤面する。


「あれから週末、二人で会って、今までの事を、いろいろ話して、改めてこれからもよろしくって、お互いに再確認したんだ」

「え~~~~~っ!いきなりデートですか?浩さん、すげ~!」

「ま、まぁな。でも、改めてって言ったけど、それが実は、結構前からお互いに意識していたって言うのが分かり、この前の事を、再認識して、再確認したんだ」

「やっぱりね、真由ねえちゃんは分かっていたけど、浩さんの気持ちにはちょっと気が付かなかったんだ私」

「美沙、お前すげ~な、オレそう言うのカラッキシダメなんだ」

「お兄ちゃんはそれでいいの」

「何だよそれ....」



「それで、お父さんは同じ席にいたけど、居なかったお母さんの方はどうだったの?」

「それがさぁ.....」


 真由が楽しそうに、話し始めた。

「週末、浩さんに家に来てもらったら、もうお母さんってば、『まぁ、真由ちゃん、イケメン連れてきてくれて、お母さん拝んじゃっていいかしら?』だって言っていたの。だから私、もう、縁起でも無い事しないで!って、言っちゃった」

「えぇ!もう家に浩さん連れていったの?....はやっ!!」

「だってぇ~、お父さんが、早速連れて来いって言うんだもん」

 そこで浩二が。

「まぁ俺も、早い方がいいかなと思って....」

「もう婚約でもしそうな雰囲ね」

 とミィが言うと。


「どどどどどどどどどど......」って、真由の、例のがまた始まった。

 (う~~ん、先回は す・き・で・す...、 だったのが、今回は “ど”なんだけど、“ど”って何? 意味不....(作))



 何かちょっと美沙に馬鹿にされている様な感覚を受けるミヤであるが、その後に真由がトンデモナイ事を言った。


「今回は私たちが “公開処刑” を受けたけど、次はあなた達よ! ミィ! ミヤ!、分かってるわよね!!どっちみち、もうバレバレなんだから、早くしなさいよ!」


 『あ!ヤバい。 そういえばオレたちまだ正式に交際を表明していなかった。これはかなり不味い事になりそうだ』

と、ミヤは思い、ミィの方を見ると、それはそれは しっかり固まっていた。(ガッチガチ)って音が聞こえそうな位の固まり様である。


 ......でも、小声で....。

「公開処刑は絶対にイヤ!」

 と、ミィは呟いている。


(オレだって.....(ミヤ))


            △


 和気あいあいの5人が、コンビニの席の少ないフードコートに陣取って「ぎゃぁ、わぁ...」と騒いでいたので、何かに気づいた浩二が。


「そろそろ帰ろう」

と、みんなに気づかせた。

 他の4人は。

「「「「あ!!.......」」」」 と言って、お開きとなった。


 その時のコンビニ店長の表情が、“やれやれ” と言う表情をしていた。


(さすが浩二。大人だね(作))



                  △



 浩二は、真由との交際には最初戸惑っていた。


 以前に付き合っていて、死別した彼女に、真由が何処となく、容姿と仕草が似ていたからだ。

 それ以外にも、積極的な喋り方とか、柔らかい物の言い回しとか、そういう雰囲気が、どことなく似ているのだ。

 (まさか、まだ彼女の面影を追っているんじゃぁないか........)

などと、思ってしまい、真由に対して罪悪感があった。

 それでも、浩二は、真由からのアプローチに答え、自分から告白した。それは、以前の彼女からの、最後の手紙に書かれていた言葉が、後押しをしたのだった。



           ◇ ◇ ◇



コウ、そんな顔しないで。私これでも、あなたと会えて十分な幸せをもらっていたのよ。だから、悲しい顔しないで」

トモ......」



 亡くなった彼女の名前は 中川なかがわ 智美ともみと言う。



 病院のベッドで、力なさそうに言葉にしてくれる彼女を、浩二は涙を堪えて聞いていた。

 握り合っている二人の手を、智美は一度解き、枕の下に挟んでおいた封筒を、浩二に渡した。

「これ、後で私のいないところで読んで」


 智美はそう言い、血色の少ない手で、一通の手紙を浩二に渡した。


「なに?.....」

「いいから...」

「う、うん...」


 その後、疲れたのか、智美は浩二の手を再び握りながら、眠りに入った。



 そして。

 その2日後、安らかな寝顔を見せながら、智美は静かに亡くなった.....。

 残された、両親と弟、それに浩二は涙で、智美を見送った。




               △




 何日も、全く気力が沸かない浩二が、ふと、智美から最後に渡された封筒を思い出す。


『私のいないところで読んで.....』

「そんな事を言ってたな....」


 部屋の引き出しに仕舞っておいた封筒を手にして、開封した。そこには二枚の便箋が入っていて、綺麗な文字で書き綴られていた。



〖浩、今までありがとう。 私があなたに出会って、どれだけ救われたか、どれだけ幸せだったか、今では、色んな事が思い出されます。

 ほとんどが感謝です。


 あなたはいつも私を笑わせてくれた、楽しませてくれた。とにかく一緒にいるのが嬉しくて、会う日が楽しみで、わくわくと胸の高鳴りを覚える日々でした。

 それなのに、こんな病気になってしまって、ごめんなさい。

 あなたを悲しませてごめんなさい。

 

 それでも、あなたは私を気遣って、闘病中も、私を笑わせてくれましたね。とっても嬉しかったです。


 もう私の命は長くはありません、それでも、あなたは通って会いに来てくれた。こんな彼氏は誰にも渡したくありません。出来れば一緒に、一生を添い遂げたかった.......。でも、そのような事は、どうやら叶うことは出来無さそうです。


 だから.....、だけど.......、悔しいけど.....、言いたいくないけれど.....。



 私が居なくなったら、もう彼女は要らないとか言わないで。あなたならそう言いそうだから。

 でも、もし新しい彼女が出来たとしても、この私が居たって事を、お願いだから、どこか、どこでもいいから、心の隅に私の痕跡を残しておいてください。

 私の最後の我儘です、受け取ってください。



愛しい愛しい、私の浩二、私が居なくなっても、ずうっと愛していますからね。


                  ありがとう、浩二。




PS.

新しい彼女が出来たら、浮気はだめよ。絶対。  空から見てますよ!〗     



 読んだ後、浩二は頬に流れる涙と共に、寂しく笑っていた。


「智。何だよこれ、PS って....」


 ふふふ....、と涙ながらの笑いが暫くしても止まらなかった。



           ◇ ◇ ◇



(智美、お前のお陰で、前に進めそうだ、ありがとな)

 と、今更ながら、智美の存在の大きさを、改めて思う浩二であった。


 近いうちに、真由にこの手紙を見せようと思った。




         □ □ □




 日中、現場での作業は坦々と進み、大きなトラブルもなく過ぎていく。この現場もあと半月くらいで終了する。その中で、今回のこの作業員の中に、岡田が居てくれた事に浩二は感謝した。


「もそろそろこの現場も終わりですね、岡さんは、この次は何処に回されるんですか?」

と、岡田と浩二が午後の休憩中にミヤも交えて、自販機の隣にある休憩所で、休んでいる。

「そうだな、浩クンもミヤくんも結構世話になったな、この現場は久々に人間関係に充実出来た時間を過ごさせてもらったな。で、次の現場は大手車メーカーの工場新築工事だったかな....、ココからあまり離れて居ないんで、また君たちに何処かで会えそうだ、ま、浩クンは最近真由と家に居る事が多くなったがな」

「はは....」

 浩二がこの岡田の言葉に若干はにかむ。

 続けて。

「そうなんですか。俺とミヤも今度は山を削って、大きな工場が出来る現場らしいです」

「そうか。お互いに忙しそうだな」

「そうですね、暇になるよりはいいですかね」

「ははは、全くだ」


 改めて岡田が。

「ホントに世話になった、次回もこんな機会があったら、またよろしく頼む」

「いえいえ、こちらこそ、もし一緒になる事があったら、ぜひ!お願いします」


 いままでの色んな作業の事を話しながら、休憩時間が終わりに近づき、多くの作業員が、各作業ヤードに戻って行き始める。

 浩とミヤも岡田に礼を言って、自分たちの作業ヤードに戻って行く。


「浩さん、もう少しで本当に終わりなんですね、なんか思い入れが結構あった現場なんで、寂しい感じがします」

「そうだな、でも俺たちは次に向かって行かなければならない。(自分に言い聞かせるように)次も、元請けに喜んでもらえるように、しっかりやろうな、ミヤ」

「はい!」



「ところで浩さん」

「ん?何だ?」

「真由とはどうですか?」

「ば.......」

「あははは...」

「こいつ!!」



 仲良く走って作業ヤードに向かう二人だった。




(浩二、空から智美が微笑みながらで見てる気がするぞ (作))






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