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雅と雅 (C)編  作者: 雅也
7/10

7話


                   7



 ミヤが店に降りてくると、もう二人は揃っていた。


「おぅ!待ってたぞミヤくん」

「岡さん、早いですね」

「はは、でも今さっき来たところだ、だから今からが一杯目だ、揃ったんで、乾杯しよう」

「そうですね」


「乾杯!!」



 みんなゴクゴクと、中ジョッキで飲み始める、一気に半分くらいになって、ジョッキから口を離したところで、岡田が話し出す。



「いやぁ、今回のこのピンチは、浩クンの発案と、ミヤくんの貢献で、余裕で乗り切る事が出来た、ホントに感謝しているよ、お二人さん」

「いやいや、たまたまウチの工程に余裕があって、それにたまたまミヤにも余裕が出来ていたんで、タイミング的にも良かったです」

「おかげで、明日の金曜日の作業内容がスカスカになって、困っているんだ、どうしてくれるんだ?ミヤくん?、君のOオペレーターの腕が良すぎて....、はははは!」

「嬉しい事を言ってもらえて、ありがとうございます。なんか、べた褒めみたいで、くすぐったいです」

「いいんだ、その分作業員を、他の忙しい現場に廻せて、そっちからも、感謝されているんだ。大いに助かっている」



 うまい酒と、和気が合い、楽しい時間になっていく。


 色んな事を話していくうちに、お互いの事を以前よりも、良く分かり合えた。


 ココで、岡田が不意な一言を言う。


「ところで浩クン、嫁さんはいるのかい?」


 突然の事で、浩二はハッとするが、すぐ答えた。


「まだいません。ちなみに彼女も今はいません」

「....って事は、以前に付き合っていた娘が居たって事かな?」


 少し俯き気味になる浩二。


「はい、そうです」

「今 いくつになるのかな?」

「もうすぐ29歳です」

「そうか、もう君くらいなら嫁さんが居てもいいんじゃぁないかな?」

 少し寂しそうに。

「そうなんですが、あまり彼女とかは....」

「そうか。何か理由があったんだな、いや、悪いことを聞いてしまったな、スマン」

 浩二からの“何か”の雰囲気をを感じ取った岡田が、小さく謝罪した。


「いえいえそんな、もう過去の事ですし、そろそろ自分も変わらなくてはとは思ってはいるんですけど」

「そうか、色々あって、やっと前向きになる事が出来た感じかな?」

「そうならなきゃって、思い始めているところです」

 

 いいタイミングと思い、ミヤが聞いてみる。


「浩さん、実はその事なんですが......」


ミヤが話に入って来るとは思わなかった浩二が、少し意表を突かれた様に、ミヤに言い返す。

「何だ?ミヤ 何か言いにくそうな内容か?そんな感じに見えるが」


 (そう.......。言いにくい。全くもって言いにくい。浩さんを好きな女の子が、岡さんの娘さんだなんで....、でも、それでも何とかしたい、なんとか.......。浩さんも、真由も出来ればこの先、幸せになってくれれば.......)

そうミヤが思っていると....。



「「こんばんは~」」


突然カワイイ声二つが店内に響く。


「真由!」

「真由ちゃん!」

岡田と浩二が降りてきた二人を見て声を発した。


ミヤが。

「どうしたんだよ、降りてきて」

ミィが。

「真由が、何か待ちきれなくって、行くっていうもんだから」

 と、小声で言う。

「浩さんこんばんは、お父さんココ座っていい?」

と言って岡田の隣に座った。


「真由、そういえば、友達だったなココのと」

「うん、そうだよ」

浩二とミヤは、4人掛けのテーブルに隣同士で腰かけているので、岡田の隣が空いていた。


ミィは、そろそろ店に出る時間なので、着替えて来るっと言って、一旦その場を離れた。


              △


スローペースで和気あいあいと4人で楽しい時間が過ぎていく。


岡田がまた切り出す。


「浩クン、....で、理想の結婚像ってのはあるんだろう?」

 この岡田の発言に、真由がハッとなり、浩二を見つめた。


「ミヤはどうなんだ?ミィちゃんと、結婚の話はそろそろ出ても良いんじゃぁないか?」

「ずるい!浩さん、こっちに振った.....」

「はは、バレたか」


(浩さ~ん、オレたちのことは内緒だって言ってるのにぃ.......(ミヤ))


じぃ~....っと浩二を見つめる真由。


 浩二がその真由の目線に気が付いた。


「なに?真由ちゃん」


 顔を赤くしながら、慌てて目線をミヤの方に逸らす。

「なんでオレに向くんだよ、真由」


 そうしたら、いきなり真由が。


「こここここ....、浩さん....」


「「「???????」」」


「すすすすすす...」


 それ以上言葉が出てこない、真由。

「どうしたんだ真由、なんか変だぞ」

 と岡田。


「きききききき....」


 またおかしくなった真由である。


「おい!真由」


「でででででで....」


「真由ちゃん、とりあえず水飲んで」

と、浩が飲んでいたコップの水を差しだすと、真由は一気に飲み干した。

そして。


「す~~~~~....」


 っと、真由が言った瞬間に、えらいことに気づいた。


「こ、これって、浩さんのコココココ、コップですよね?」

「あ!ごめ...、イヤだった?スマン」

「あ、いえいえ、そんな...、ラッキーでしたから....」


「はい!??」


 娘の様子に何となく気が付いた岡田が


「何だ?真由、お前、浩クンの事が好きなのか?」

 真由の心臓が どっき~ん!!と跳ね上がった。


「お、とととと、とうさん!なななな、なにを言ってるの?」


(何故ストレートに聞いてくる、父よ....(真由)))


 真由の顔がさらに赤くなり、目線がキョどる。

 そんな仕草に岡田が。

「分かりやすいな真由、何時からだ?」

「そそ、そんな....」


 あまりにも見ていられないミィが、しゃしゃり出た。

(いつから居た?)


「もう!観念しなさい。バレバレよ真由!」

「あわわわわわわ.....」


 真由が壊れはじめるが、続けてミィが喋り出す。


「えっと.......、かれこれじきに半年くらいは経ちますか....。最初 私に相談してきたのが3か月くらい前です。その頃は、浩さんてカッコいいなぁ....、なんて言っていたのに、さらに半月くらい経ったら......」

「もう許してミィ....」

「だめよ!ココまできたら、もうこの際だから“公開処刑”します」


「ひゃぁぁぁぁぁ~.....!」

 真由から悲鳴が上がった。


 そんなのは一切見向きもせずに、ミィが浩さんに向かって。


「今では浩さんの事、好きで好きでたまらないんですこの。今まででも、それとなく分からなかったですか?浩さん」



 暫くあっけに取られていた浩二が口を開く。


「以前はよく話しかけてくる娘だな、とは思ったんだけど、最近は、距離が若干近くなったかな?と思っていたんだ。なので、真由ちゃんの気持ちは なぁんとなく、うん、なぁンとなくだけど、そうかな?....、とは思っていたんだけど」

「ほほう、浩クン、うちの娘の気持ちには、気が付いていたと言う事なんだね」

「そ....、うですね。....は、はい。はっきり言ってそうです」


 なるほど、と、納得したように岡田が言う。


「俺も、もうじき25になる女が、今まで彼氏の一人も連れて来ないなんて思っていたんだが、もしかして、男に全く興味がないのかと、心配していたところなんだ」

「私も、大学時代のころには、何度か真由は、男子に告白されていたみたいです。でも、みんな断っているので、おかしいなとは思っていたんです。.....ん?真由!まさか、もしかして、その頃から浩さんの事を.....」

大学時代の事までミィにバラされ、その事で、緊張と羞恥が真由がとうとう失神させた......。




(ブクブクブクブク....、なんて、カニみたいだぞ真由(作))



          ◇



 殆どの客が帰った後、真由が落ち着いたのを見て、ミィが。


「浩さん、こんな真由ですが(どんな?)気持ちを受け取ってもらえませんか?」

「ミィ、岡田さんもいるんだぞ、そんなホントに 公開処刑 みたいな事を.....」

「何なら家内も呼ぼうか?」


 岡田が娘をいじる。

「お、お父さぁ~ん.....」



(岡田さん。真由がかわいそうですよ (作))


 

 さらに少し間を置いてから岡田は、真剣に願望の気持ちを込め、愛娘の想いを叶えさせようと、浩二に向き直り。

 

「浩クンさえ良かったら、ウチの娘の事を考えて欲しんだが、どうかな?」

 (あれ?もしかして、キューピットって、岡さん?)


 少し考えてから浩二が。


「岡さん。俺の事をそこまで思っていてくれるのは大変ありがたいです。でも俺、30が近いですが....」

「はは、昨今珍しい事ではないだろう。ま、こうして“父親が認めた男”と娘がもしも一緒になってくれれば、それはそれで、俺は安心出来るしな」

「ありがとうございます。そこまで信用してもらい、俺嬉しいです」

「では、まとまったって事で良いのかな?」


(あ!父親がやっぱりキューピットだった)


 面持ちがフルフルしている真由を、浩二が見つめると。

「浩さぁ~ん、ホントに私でいいの?」

と、真由が浩二に訊いてきた。

 そして、真由の涙腺の表面張力がもたない。


 そして浩二が。


「俺オジサンだけど、いいのかな?....、真由ちゃん」

「な.......。そ、そんな事....、ない....、から...」


 言葉がうまく出ない真由、しかしちゃんとした告白と、その返事をまだ貰っていない。

「こ、浩さん、ふつつかな私ですが、末永くおね.......」


 浩二の人差し指が、真由の唇を塞いだ。その瞬間、真由がまた赤くなる。


「これから先は、俺から言わせて、真由ちゃん!」



 浩二は一度深呼吸をして、まっすぐ真由に向かって言い始めた。




「真由ちゃん....、いや、岡田 真由さん、こんなおじさんなオレですが、これからの人生を、俺と一緒に居てください」


 真由の涙腺が、決壊した。


「はい!、浩さ...、浩二さん。これから末永くよろしくお願いします」



 周りのみんなからは、拍手が起こった。



 何かに気づいたミィが

「真由、何かもう結婚する感じに聞こえたけど」

「俺もミィと同じように聞こえたけど、浩さんもですよね」

「あれ?何か俺、急ぎすぎた感があったか?」

「もう、婚約しちゃったような勢いでした」


 事の成り行きと全容を見届けた頬が緩みっぱなしの岡田が。


「いやいや、丸く収まって良かった良かった。今の光景を家内に見せたかったよ」


 すると、こっそりと、店の入り口から


「ジャ~ン!今の撮ってましたよ、しっかりと!」

と、美沙が出てきた、しかもスマホの録画モードで、決定的な瞬間を記録したみたいだ。

「えぇ!!撮ってたの?今の」

 美沙が“てへっ”顔をした。


「いやぁ、入ろうとした瞬間に、面白いことが始まってる感じがしたので、つい....」

「ついかよ...」

 ミヤがちょっと呆れた感じで言った。


「美沙ちゃん、それ消して。とってもハズいから」 

と、赤面の真由が懇願した。


「でも、真由ねえちゃんの七面相が見れて、うふふ、楽しかったよ、だから、消さなぁ~い」

「美沙、それDVDに焼いて、岡さんにあげてくれ」

「ミヤまで何言うの?信じらんない」


 色んなやり取りが進む中、岡田から。

「そうだな、後で家内とゆっくり見たいんで、え~と、美沙ちゃんだっけ、お願いしてもいいかな?」

「あ!初めまして。石仲 美沙って言います。今は大学の3年生です。 はい、出来上がったら、お兄ちゃんに持たせますので、奥さんと、ゆっくり堪能してください」

「はは、ありがとう、お願いするね」

「はい!」


 まるで蚊帳の外に居るようだが、この主人公に該当する当人たちの 浩二と真由は。

「あの~...、さっきからそっちばっかり盛り上がってるんですが、この通り、いま真由ちゃんがまた失神しまして、そろそろ許して上げてください。ちなみに、俺もほとんどHPがありません」



店内のみんなが ドッと!笑った。



 実は、さっきから真由はテーブルに突っ伏していて、浩二に頭を撫ぜられながら、失神していた。




(ま~うらまやしい........え? うらやましい、ですね(作))



                 △



 真由、ホントに良かったね、やっと願いが叶って。(ミィ&ミヤ)


 そうなると......。  




『ねぇミヤ。私たちは?これからどうなるの?』

『う!!.......』

『ねぇ.........』

『と、とりあず、週末の公開は、延期にしようミィ...』

『そ....、そうね。さすがにこんな事があった週末はムリよね...』




(またも公開時期を逃す二人であった(作))





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