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雅と雅 (C)編  作者: 雅也
4/10

4話


                 4


 明けて火曜日。



 今日は午後から”岡さん”たちの現場に出向いて、クレーン作業をする日だ。


 各作業員はそれぞれ作業用に身支度を整え、毎朝恒例のラジオ体操、朝礼を終え、各現場に散っていく。

 今日のミヤたちは、午前中は大型ダンプに、砕石を積んで、おなじ作業ヤード内でそれを下ろし、その砕石の敷均しを重機で行う作業だ。

 結構な量なので、大型ダンプの運転手も

「こりゃ、午前中に終わらないかもしれないかもな....」

と、不安そうに言う。


 「とりあえずやってみましょう。それでも終わらなければ、早い時間に、なにか対策を立てましょう」


 そうだ、とりあえずやってみない事には、先の見通しはきかない。

「じゃぁ、お願いします」

 といって、作業が開始した。

 

              △


 暫くは順調に進んでいたのが、次第に大型ダンプの通り道に、色んな業者から頼まれた、運送会社のトラックが数台荷下ろしをしていて、なかなか思うように進んでいかない。

 これでは午後からの”岡さん”達の現場へ行けるのは、いつ頃になるのか心配になってきた。

 荷下ろしのための、フォークリフトが多く、ダンプの通り道を時々塞ぐのを見て「もう一台ダンプを増やしましょう」

 と、ミヤが浩二に提案した。


「そうだな、たしかウチの4トンダンプが空いてたな、それを使おう」

「そうですね、運転手は季節従業員の浜田さんがいいですね、元トラック運転手だったですし」

「あぁ、そうしよう」


 浩二が浜田さんを呼んで、ダンプに乗るように指示をした。



 その後、作業は意外と早く済み、砕石運搬作業は11時過ぎには終わった。

 午後からはその運んだ砕石を、浩二が均す作業なので、ミヤが空いてくるのだ。



 昼までもう少し時間があるので、ミヤは午後からの作業の手伝いをする”岡さん”の作業ヤードを見に行くことにした。

 浩二に”岡さん”のところに行って、状況を見てきます、と言って自分たちの現場を離れた。


              △


 やって来た”岡さん”たちの現場は、10人くらいで一台のフォークリフト使い、一階から二階の荷揚げ用踊り場まで、荷を揚げている最中だった。

 現場作業責任者の”岡さん”のところに寄っていき、午後からの作業合流のOKを言い伝えた。

「岡さん、予定通り、オレ午後から来られますんで、よろしくお願いします」

「おぉ、わざわざ言いに来てくれたんだな。ありがとう、午後から頼むぞ」

「はい!」

「あのフォークリフトの隣にある、クレーン付きトラックで頼むが、操作したことはあるのかな?」

「はい、自分も会社にこのようなクレーン付きのトラックがあって、何度も操作はしているので、いけます」

「はは、頼もしいな」


と言った後すぐに


「実はな....」

 と、岡 が急に話をしてきた。 

 ミヤは、一体なんだろうと思ったが、そのまま聞くこ事にした。


「実は、俺の娘の友人に、お前と一緒の名前の友達が居てな、その娘も 雅 っていうんだ、お前も 雅 って同じ漢字だろ?だから、先日あんな風な会話になってしまったんだ」


(あ、そうだったんだ....)


「へぇ、そうなんですか。岡さん 娘さんがいたんですね、しかも、その友人がオレと一緒の名.....って、え?え?えぇ...!!」

「も、もしかして、今更ですが、岡さんって、苗字 ”岡田”さんですか?」

「おう、今更だな。そうだが」


 岡田に少し笑われた。


「もしかして、娘さんって、”真由”さんって言います?」

「なんだ、知っているのか。もしかしてミヤくん、うちの娘を狙っているのか?」

「あはは、違います。 オレの彼女の友達なんです」


(あ!言っちゃった....)


「なんだ、あの店屋の娘と付き合っていたのかミヤくん」

「はい、でもあまり広めないでくださいね」

「悪いな、俺、晩酌やっちまうと、忘れるんでな....」

「えぇ...!」

「はは、冗談だ、人の不利になる様な事は、相手が悪者でないかぎりしねえよ」


 ホッとするミヤ。


「....ってことは、うちの娘とも親しいのか?」

「はい、彼女経由で....」

「その 雅ちゃんとは結構仲良いみたいなんで、これからも、その彼女と二人でいい付き合いをしてやってくれ」

「いえいえ、こちらこそ真由に.....、真由さんには、雅がすごくお世話になってるんで、よろしくお願いするのは、こっちのほうですよ」

「まさか、こんな繋がりがあるとはなぁ、世間って意外に狭いもんだな」

「そうですね」


(驚いた。真由と岡さんが親子だったなんて。こりゃ、ミィに伝えなきゃ)



ミヤは挨拶を終えて、自分たちの現場に戻ってきた頃には、みんな昼食に入っていた。


              ◇



 午後からは予定通りに、ミヤは岡田たちの作業現場で、滞りなく作業は終了した。


「いやいや、助かった。ミヤくんって、意外にクレーンの操作がうまいんだな、見ていて、とっても安心できた」

「ありがとうございます」

「この分なら。予定よりも早く終わりそうだな、助かるよ」

「どうだ、うちの会社に来ないか?」

「社長に殴られます」

「あ~っはっはっ....、冗談だ、ミヤくんくらいのOPがうちに居てくれたら、そうとう作業が進むがな....」

「そう言ってもらえると嬉しいです」


そう言いながら、ほかの作業員さんと少し会話をして、打ち解けたところで、解散した。



        ◇ ◇ ◇

               


「そんなんで、びっくりだったんだ、今日は....」


「えぇ?、そうなんだ~。 真由のお父さんと、ミヤが今行っている現場の中の職長さんがねぇ...」

「あるんだな、こんな」

「ねぇ...」


 恒例ではあるが、いつもの様にミヤとミィは、いつものコンビニのフードコートを喫茶店代わりに使いながら、いつもの時間帯に、たわいもない事を話している。


「そう言えば、真由のお父さんって、職人の親方って言っていたわね、真由の家には良く行ったことはあるけど、2度ほど挨拶したかな、やっぱ外で仕事する人って感じだったよ」

「何か親分肌で、気風が良くって、ハキハキしてて、喋っててやる気を出させてくれる、何かちょっと 浩さん と被るところもあったみたいな感じの人だったな」

「ふぅん、私も喋った時は、背筋がピン!としたもん」

「.....で、流れで、オレ口が滑って、ミィとの事バラしちゃった、スマン」

「えぇ、ダメじゃん! そこから広がっていかないか心配だよ~」

「でも、大丈夫みたい、口は結構堅い感じだし、余計なことは言わない人みたいだから」

「そう、なら安心ね」

「ま!バレてもいいけどな~....」

「いいの?...いいの?...い~のぉ?....」

「な、なんだよ、その眼は。....カワイイけど.....」

「うぅ...。ミヤ またそんな...」

「どうだ、まいったか」

「参りました、フニャ~...」


(ホンっとにミィって可愛いな....)


 ミヤは周りに人がいないのを確認して、一瞬で終わるキスをした。

 すぐミィの顔が ボン!!と爆発した。




 (あぁ~....、ミィ、真っ赤っかだ)



              △



 コンビニを出て、いつもの様に会話をしながら、手を繋いで帰って行く。

「明日って、店休みなんだよな、ミィ」

「うん」


(まだ顔が赤い?)


「何かする予定があるのか?」

 と聞くと。

「明日はハローワークに行こうと思ってるんだ」

「いよいよか。でも大丈夫か? 何か心配になるな」

「うん、でもそろそろ社会復帰をしないと、いつまでも家の手伝いばかりもしていられないし、心配もかけられないし」

「でもオレは....」

「もう、心配ないって。ミヤの気持ちはとぉっても嬉しいんだよ、でも、そろそろ自分で動き始めないとね」


「そうじゃぁなくって...」

「なに?はっきりしないわね、何なの?...」


「ん~........」


「何なのか言いなさい!!」


 と言いつつ、ミィがミヤの脇を擽る。


「きゃはは........」


と、くすぐったいながらも。


(そろそろやっぱ決めないとな.......)


「ミィ、やっぱ近いうちに、オレたちの事、皆に公表しよう」


「えっ?」


「みんなにオレたちの事を知ってもらおう」

「なぁんか、この前みたいに今更って感じもするけど、何時かは言わなきゃならないよね」



「「ふぅ.....」」


二人で深いため息を出した。


「じゃぁ、一応の公表予定は、今度の週末で、場所は、”はまちゃん”でいいかな?」

「う...うん、分かった、お店の都合聞いてみる。わたしも覚悟することにしたから」

「よし!そうと決まれば、二人で赤っ恥かこうぜ」

「なに、その超恥ずかしい前提の言い方。もう今から緊張してきたじゃない」

「取りあえず、時間は何時にする?」

「午後9時だとまだ店やってるよな」

「一応聞いてみるけど」


 という会話と共に、二人は今さなながら、公表が現実になる事に、緊張な気持ちが湧いてきた。



               △



 金曜日は稼ぎ時なので、期待はしていなかったが、少し早めに店を終了してもらい、午後9時に、双方の親たちのOKをもらい、その前で打ち明ける事を 一応 決めた。




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