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雅と雅 (C)編  作者: 雅也
3/10

3話


3


 新しい一週間がやって来た。


 今週からの業務内容は、先週までと違って、極度な多忙さはなく、結構落ち着いたペースで作業を進める事ができる。


 今週から時々ではあるが、午後の業務開始前の現場監督たちと、その現場に入るいろいろな業者間での昼礼に、ミヤたちの会社からは、浩二と職長の他にミヤも暫くの間だが出席する事になった。



 その昼礼も、終盤にかかってきていた所で、何か揉め出した。


 何故か一人の職長が、監督の一人と言い争いを始めた。


「安全作業が一番だなんて言ってても、あんたたちの事を全部聞いていると、はかどる物も全然はかどらないぞ」(職長)

「そんな事を言われても、他の業者さんは、ちゃんと守ってやってくれているんです」(監督)

「特に、今この多大な荷揚げ作業だって、今週中にしておかないと、来週から入る業者たちが、遊んでしまうんだろ?」

「そうなんです」

「だったら、ここの週間工程表にあるラフター(クレーン車の種類)を、俺たちのために、小型でいいから、もう一台増やしてくれ、なら何とかしてやる」

「とりあえず今週は、各業者順番で時間通りにクレーンを使っているんで、そうはいかないです。それと、もう一台増やすって言われますが、ラフターがアウトリガーを張り出すスペースもありませんし」


(すみません、専門用語で(作))


「4トンのクレーン付きトラックを借りれば幅的には済むことだろ? 荷だって、1つ500kgくらいしかないんだろ?」

「そうも考えましたが、今どこもOPが不足しているらしく、機械はあっても、とても急にOPを頼むわけにはいかないんです」

「それじゃあ、あと2人作業員を増やさせてくれ、それなら何とかフォークリフトと手作業合わせて、今週中に終わらせる。一つの荷を解体すれば、1つづつが20kgになるんだ」

「今週末まで2人だと....、10人工にんくですか.......」

「何とかなるのか?」

「..........」



「申し訳ありません。それだと赤になるんで、無理です」

「そんなんは、どっかから削ってこい!」

「そ、そんな.....」

「って事は何も変わらないって事だな。じゃあ来週まで荷揚げはかかるな、話は以上だ、俺は現場に戻る」


言い合いをしていた職長が、席を立とうとした時に、浩二が話に割って入る。


「岡さん!」


 と、そちらに向かって呼び止めた。(あの職長さん”岡さん”っていうのか)とミヤは思った。

「あ?....、あぁ、浩クンか、どうかしたのか?」


 現場事務所を出ようとしていた“岡”だったが、浩二のよ呼びかけに止まった。


「今の話ですが、クレーンのOPが足りないって言いましたよね」


 少し不思議そうな顔つきになる“岡”。


「そうだが」

「そう言う事だったら、ウチで良かったら出しましょうか?5トン未満の作業ですよね」

 これには監督たちが「おぉ!」と言って声を合わせた。さらに浩二が。


「実は、今週のウチの工程で行くと、半日で3回くらい、計1.5日分の時間なら、なんとかウチは一人クレーンOPを捻出できますよ」


 この浩二の意見に、監督側も浩二に視線を集中する。


「ほんとか!浩クン。そりゃ助かるが」

「良ければですが」

「いや、ぜひ頼みたい。でも浩クンが居なくなったら、そっちの現場はどうなるんだい」

「あ!すみません、俺じゃぁないんです。コイツです...、いいよな、ミヤ」


と、浩二はミヤに指をさして言った。


「おっけぃですよ」

 ミヤは困った時の業者間の“助け合い”を、浩二が進んで行っている事に、横の繋がりを大切にしている人物という事に、尊敬を払っている。


「コイツは5トン未満の移動式クレーンの資格と、玉掛の資格も持っているんで、役に立てると思います」

 これには監督たちも、岡さんも「あぁ、なるほど」 と、合わせて納得したみたいに、声を合わせた。

 元請け監督達も、ミヤの仕事振りは十分に知っていて、安心できる人物なのは認識している。


 監督たちが。

「浩さん、ホントにありがとうございます、助かります。これで、来週から来る職人たちに合わせられます」

「この 若い衆は?」

 と、岡 が改めて聞く。

「石仲 雅 です」

 と、軽く自己紹介をすると。

「石仲クンか....。ん?? 雅だって?」

「はい!そうですが...」

「う~ん........」

 岡 が何か、考えている様子だ。が、しかし。


「ま、よろしく頼む、浩クン えっとみやびクン」

「あ、俺〝ミヤ”でいいすよ」

「じゃぁミヤくん頼んだぞ」

「「はい!」」


 と二人で返事して、元請け監督たちはホッとした気分で、昼礼はいつもより長めで終わった。


 だが、(何だろうさっきの岡さんの間は....)と、少し疑問が残るミヤだった。



             △



 実はミヤは、あの”岡さん”と言う職長さんと少し前に、会っていた。




 午後の休憩中に、現場の自販機あたりで会話している職人さんたちの中に”岡さん”がいたのだ。

ミヤが用事でその横を通り過ぎようとした時だった。


「おう!若い衆、コーヒー飲んでけ」


 と言って、自販機にお金を入れてくれた。

 そして。

「遠慮すんな、好きなの押せ」


 ミヤは言われるがままに、飲料を購入し、すぐにお礼を言った。


「ありがとうございます。いただきます」


 出てきた缶を手に取り、さらに。

「ご馳走様です」

 と言って、ちょっとだけそのチームの人たちと会話をした。



 少し前に、そんな事があったので、面識は初めてではなかった。


             △


昼礼が終わり、話しながら、現場に向かうミヤと浩二。


「.....、そんな事があったんですよ」

と、浩二にミヤが言うと

「あの人、言い方はぶっきらぼうなんだが、結構イイ人なんだよな、おれは結構気に入っている人物の一人だ」

「そうですね、あんな感じの人だから、みんなが付いてきてくれるんですよね」

「そうだな」

と、浩二が言い、さらに。

「明日の午後がまず一回目だぞ」

 と言って、ミヤの肩を叩く。

 はい、頑張ります。 と言って、午後の作業に取り掛かった。



                 △



 月曜日の作業も予定通り終わり、家路につこうとしていると、ミヤのスマホが鳴った。

『ミヤ、終わった?』

 ミィからの、定期通信である。


『うん、今終わった、なに?』

『今日も店来る?』

『行こうかな~、どうしようかな~.....』

『何、その言い方、意地悪ぅ!』

『昨日、あの後、浩さんと真由ってどうなったんだ?』

『スルーしないで!』

『あ!分かった?』

『もう....!』

『後で行くからさ、その事は行ってから聞かせてくれよ』

『うん分かった。じゃぁ気を付けて来てね』

『おっけぃ、それじゃぁ』 


なんて、日常の他愛もないやり取りをする二人だった。





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