1話
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改めて、色々な紹介があります。
◇
大きな部品工場の新築工事現場の外構工事で、ひたすらに大きな建設機械の重機が動いている。
その運転手OPでもある、石仲 雅は、とある地方にある、建設会社の現場作業員で、職種は建設機械等のオペレーターである。
大手建設会社(ゼネコン大手)の下請けに入っている現場で、日々パワーショベルなどの重機を使い、掘削・整形・ダンプ積み込み・クレーン作業などを行っている。
長い繁忙だった数ヵ月も、そろそろ終盤になり、工程に、一区切りが出来た事で、ミヤが居る作業チームも、どことなくホッとして、工事終了に向け、残された業務を、坦々とこなしている。
△
今日 土曜日は、ちょっとした作業工程にキリがついたので、会社の先輩 早川 浩二と雅で お好み焼き”はまちゃん”で一杯飲もうって話になり、先に来て、店内で待っているところだ。
浩さん遅いな? などと思っていると、この”はまちゃん”の看板娘 浜 雅が 「浩さん遅いね」と、訊いてきた。
この 浜 雅 と 石仲 雅 は小学校からの同級生である。
「ミイ(浜 雅の通称である)、店終わった後、いつも通りでOKか?」
と ミヤ(石仲 雅の通称) が聞くと。
「うん、大体片づけが終わると9時半くらいになるんで、いつもと一緒だね」
とミイが言う。
「じゃぁ、また後で」
と、ミヤは小声で返した。
ミヤは今どきの若者の容姿で、背丈は170㎝後半でもうすぐ25歳、時々現場仕事の作業員とも一緒に作業するので、細身ながら筋はしっかりした体つきをしている。
顔立ちは、優しい感じの顔立ちで、現場の人たちからは、癒されるぅ....、的な風貌である。
ミイは訳が有って(後に説明する)、今は父母の店を手伝っている。
身長は160㎝でミヤと同じ24歳、やや細身。 黒い髪は、セミロングを仕事中はシュシュでポニーテールにしている。
肌の色は普通に白い感じで、声は少し高く、良く通る優しい声だ。
大きな瞳は、母親譲りである。
実はこの二人は、高校二年から付き合っている....、のだが、実は、公表していない、もう7年にもなる付き合いなのに...である。
それも、自分たちの親にも言っていない。
(だが、バレバレだと思うのだが.......(作))
◇
雅の親たちが経営する飲食店”はまちゃん”は、父の政士の父、つまりミイの祖父が始めた。
元々は、お好み焼きと焼きそば中心の、和風ファーストフード的な店舗でスタートしたが、父の政士が、料理人の修行を終え、店に入ってからは、ちょっとした定食などもメニューに入れ始めた。
それに、店内はそれほど客席は多く無いものの、少しの酒類も扱う事になってからは、現場仕事の職人とか、会社帰りのリーマン達も寄るようになり、結構な値打ち価格で、ほろ酔い気分になれる隠れたチョイ飲みポイントとして、店内は毎日ほとんど埋まっている。
この日も15個ほどある席のうち、三分の二くらいは午後6時半なのに、埋まっている。
ミヤは客席以外にある、いつもの5人掛けのカウンターで、浩二を待っていると、少し手が空いたのか、ミイが訪ねてきた。
「ミヤ、最近忙しいの?」
少し心配そうに聞いてくる。
「う~ん、そこそこかな。今の現場、近々施主の検査があって、仕上げ作業が少々遅れてて、焦っていたところなんだ。毎日過度の作業内容で、会社が終わって、家に帰ったら即!バタンキューなんだ」
「えぇ?大丈夫? 間に合うの?」
「うん。 今日で何とか見通しが付いた、だから、今日こうして浩さんとゆっくり飲むことが出来るんだ」
「そう。よかったね」
さらに ミイが
「体の方はだいじょうぶ? 疲れていない?」
「うん、ピークは過ぎて見通しもついたし、もう後は楽勝だよ」
「なら良かった。 じゃぁ、忙しいの終わったら、(小声になって) 何処か連れてって?」
ミヤが小さくOKサインを出した。
「ミイ! こっち焼きそば定食揚がったぞ!」
と父の政士に言われて、ミイがミヤの元から離れた。
さっきから見ていた、おかみさんの 美佐子さんが。
「ミヤくん、いつもうちのミイと仲よくしてくれて、ありがとね!」
と、微笑ましい笑顔でミヤに話しかけた。
「はは! 小学校から一緒ですから」
そう....、ミイ(雅) と ミヤ(雅) は小学校からの同級生だ、しかも、下の名前が同じ雅と言う偶然一緒で、さらに、ミヤの家はこの”はまちゃん”から、右隣3件目という、飲んで帰っても、よほどの事がない限り、無事にたどり着く、絶好の居住位置なのだ。
「もう! 付き合っちゃえばいいのに!!」
「はは....、は....」
(すみません、ミイとはもう付き合ってます 美佐子さん、それに....)
と思って居るところへ。
「よお! 待たせたな、ミヤ!」
大きな声で、浩二が店の扉を開きながら声をかけてくる。
「いえいえ」
と返すと。
「済まないな。あの現場監督、結構細かくって、今まで打ち合わせがかかっちまった。スマン」
浩二は頭を掻きながら、店内を一回り見て、少し気を落とした感じで、席に着きながら言う。
「先に始めてても良かったんだぞ?」
「さすがにそれは....」
ミヤが言うと
「律儀な奴だ。はは....」
と言ってくれた。
お互いにビールを頼み、枝豆と餃子をとりあえず頼んだ。
そんな二人を少し離れて見ながら、ミィはスマホを手にした。
話をしているうちに、今回のこの工事は、結構な規模の工事の一環で、3年工事の初年度らしい。
来年度の事を考えると、今から元受け会社との関係は、良好にしておきたいとの事だ。
タンブラーを煽りながら、話の途中で。
「次回から、打ち合わせは、お前も時々出ろ」
「え?....」
っと、驚いたふうな感じでミヤが答えると。
「ミヤもそろそろ、現場の中心になりつつあるからな、俺たちの職長と話したんだが、俺と職長と一緒に、他の各現場の職長達との意見も、いろいろと聞いておくといい」
さらに続けて。
「俺たち機械のOPは、結構作業の内容の先を見て、理解していないと、作業効率に支障がでたり、ロスが出たりと、後々の工程に差が出てしまって、結局自分たちの首を絞めてしまうからな。それと、元請けにも迷惑がかかる、分かるな?」
「はい」
「その点、お前は理解は少し遅いが、作業の内容を見ると、腕は大分上がってきて、一度理解すると、冷静な判断がきくし、効率良く進めていって、結構こっちは助かっているだぞ」
「そうなんですか」
「なんだ、褒めてやっているのに、リアクションがそんなんか....」
そうしていると、ミィが。
「もう! 浩さんがこんな褒めているのって、珍しいのに、ミヤったら....」
食器をかたずけながら、ミイが 通りすがりにそう言っていった。
「ミイちゃんも ああ言っているんだから、普通に受け取っていいぞ!」
ニヤニヤしながら、浩さんはビールを煽って
「ふぅ....」
と息を吐いた。
暫くすると、入り口の扉が開き、カワイイ....と言うよりも、綺麗な女性が入ってきた。そして、2人に向かって軽く手を振ったので、ミヤ達も手をふり返した。そのうちの浩二には、軽く頭を下げてきたので、浩二も軽く返した。
そして浩二がその女性を少し見た後、またミヤに視線を戻し、再び飲み始めた。
1時間ほどして、「ミヤ、 メシ ここで食ってくか?」 と聞かれたので「今日はこれから用事があるので、そろそろ帰ります」
と言うと。
「なんだ? 彼女でも出来たか?」
と言われ ギクぅ!! と心の中で汗をかいた。
(今まで飲んだビールの水分が、ちょっと出て行ったような......)
「どうせまたミイちゃんとの夜のデートの時間だろう?....。付き合っちまえばいいのに....」
「ははは...、浩さん、何か 夜 って、変な風に聞こえますよ。しかも、オレたちそんなんじゃぁ.....」
(でも、何となくバレてるかなぁ....?)
少し離れたところで、さっきの女性とミイが親しく笑顔でしゃべっている。浩二はその女性とまた目線が合う。
一通りビールと酒のつまみ等を楽しんだ後、ミヤは そろそろ帰ります と言って席を立ち財布に手を付けようとすると。
「そのままでいいぞ! 後はやっとくからな」
さらに浩二が。
「俺はついでにココでメシ食ってから、ゆっくり帰るんで、お前は気にするな。また今度、休憩の時に、コーヒーおごってくれればオーケーだ」
「いつもすみません浩さん。その時は1.8リットルくらいのコーヒーでいいですか?」
て言った後、浩二は
「おれの胃袋 タプンタプンにするつもりかぁ...!」
と、大きな笑いで締めくくった。
あっちのほうで、ミイとさっきの女性がクスクスと笑っている。
本当に、気さくな28歳の先輩である。 なのに、彼女とか今はいない、とか言っている。
(結構イイ男なんだけどな...(ミヤ))
浩二に頭を下げ、別れを言って店を出る。
すぐにスマホを取り出し、ミィにメッセージを送る。
『落ち着いたら連絡してくれ』
すぐに既読が付く、それでミヤとミイは連絡がついたという事になっている。
「今、忙しいからな...、ミイ」
と独り言を言いながら、家に着く。時刻は8時を過ぎていた。
△
一方、店内のミイと、その奇麗な女性との関係だが、実は、ミイの大学時代の友人である。
この友人、ミイに会いに来るのも目的だが、最近頻繁に(週一くらいのペース)で、店に来ている、普通はこう言う店には女性一人では中々来づらいとは思うのではあるが、この店の娘と友人って事もあり、親たちは、普通にミイの大学からの友人と言う事で、納得している。
普通は女同士、店の2階にあるミィの部屋でお喋りするものだが、この娘はある事をきっかけに、時々下の店に居るようになった。
ちなみに、この女性の名前は 岡田 真由と言う。ミイは勿論だが、ミヤとも結構親しい。
△
家に着くと、母親から。
「ごはんまだでしょ。それとも風呂先に行く?」
「ごはんにするかな」
とミヤがいうと、すぐに用意をしてくれた。
ミヤの母親の恭子は50歳で、近所にあるベーカリーショップでパートとして働いている。
のほほんとした性格だが、芯は強い。
とにかく、家庭的な母親で、家族の事がまず第一なんだそうだ。
一方の父親の雅人は52歳で、市役所の職員。
おっとりとした性格で慎重派、決め事は速く、頭のキレる父親だ。
「父さんは?」 と聞くと、いつもの工房に居ると言う。
”いつもの 工房”
ミヤの父親の雅人は結構なハンドメ好きの、D I Yの人だ。
チョットした家の修繕から、小型家電の簡単な半田コテを使った修理まで、趣味としては結構な職人だと言える。
「最近は昔のラジオを直しているみたいね」と母。
ラジオって今どき.......。 ミヤはそう思っているが、父は
『ミヤ、ラジオを馬鹿にするな、いざって時には、スマホよりも役に立つ』
と言っている。
(本当ですか? 父上...)
(本当ですよミヤ。ラジオはイザとなったら役に立ちます(作))
△
ご飯を食べ終わり、9時過ぎになったところで、ミイから『今日も9時半ならいつものコンビニに行けるよ』と言うメッセージがはいる。
『OK、いつものコンビニで』という返事を送った。
歩いてもせいぜい3分くらいでコンビニに着く、夜会うときは、いつもここで待ち合わせをしている。道中も街灯は明るいので、とっても安心だ。
9時25分に 「ちょっとコンビニに行ってくる」と言って、家を出る。母の恭子が。
「ミイちゃんによろしくね」
と言って、ちょっと ビクッとする。
「う、うん」と言っておいた。
(やっぱ、バレてるのかな?)
家を出て少し歩いていたら、前を ミイが歩いていたので、小走りに近づいて声をかける「ミイ お疲れ様」
足音で分かったのか、左手を出して、こっちを振り向いた。
(か、可愛い) ドキっと、今でも不意にそう思う事がある。
ミヤはすぐに右手を出し、すぐに絡めて繋いだ。
コンビニに入ると、二人はそれぞれ飲み物とスイーツを買い、レジ横のフードコートで楽しい時間を過ごす。
「なかなか休み会わないよな」
「そうだね」
「オレ、天気に左右される職種だろ? だから ミイの定休日の水曜日と雨天が重なったら、何処か連れていけるのに...」
「そんな、いいよ気にしなくっても。ミヤとこうして、ちょくちょく会えるだけで、嬉しいんだよ」
はは、うれしいことを言ってくれる、可愛い彼女だ、とミヤは思った。
ところでね、とミイがミヤに話し始めた。
「真由がね、最近よく店に来るでしょ」
「そういえば、よく見るようになったかな?」
「まあミヤだって、一週間のうち半分は来てるからね。毎度ありがとうございます!」
「ははは、オレの場合は、ミイ目当てで行ってるからな」
「そうそう!そうなの!それなのよ!!」
ちょっとミヤばびっくりする。
「いきなり何だ?」
「あのね....」
話の内容はこうだ。
最近になって、ミイの大学時代からの友人の真由が、最初はミイに会いに来ていたのが、一度店の食事に誘い、夕方店内で定食を楽しんでいた時、なにかが起こったらしい....、との事だ。
「でね、どうしてって追及したら...」
ふむふむと、ミヤがさらに話に入り込んでいくと。
「どうやら気になる人が居るからって、白状したの」
「それ誰なんだ?」
「それがね、どうやら....」
「どうやら?....」
少し間を置いて。
.........。
「ミヤの先輩の...............、浩二さん みたいなの」
「「えぇ!!」」
ミヤは固まった。
しかも、言った側のミィも一緒に驚いた。
(なんで?.......(作))
「そ、それはビックリだ!」
「そうなの。実は私もビックリで、時々店の中で、あの二人が挨拶くらいはしていたと思うけど、まさかそんな風に、真由が浩さんを思っていたなんて、驚いたでしょ?、今日なんか、ミヤが帰った後、少しの間 真由が、ミヤが座っていた席に行って、挨拶交わしてから、少し喋ってたの。それが結構傍から見ていたら、お似合いな二人なんだよね~」
驚きから落ち着いてきたミヤ。
「あ~驚いた。でも、なんとなく、あの二人はお似合いだと思うな、オレも」
「でしょ、でしょ!私もそう思うのよ。身長だって浩さんとミヤとほぼ同じだし、真由だって確か165㎝近くだったって思うから、並んだら結構お似合いなカップルになると思うわよ」
そこで、ミヤがふと思い出す事があった...。
「でもなぁ...」
と、低く渋い声を発したミヤ。
「そういえば、浩さんって、昔 彼女が居たって聞いた事がある。でも2~3年前に亡くなったって言っていた様な.....」
「え!?そ、そうなんだ。すごく気の毒な事があったのね。そう言う事聞くと、何か悲しくなっちゃうな.....」
「でさ、あの時の浩さんってすごく落ち込んで、少し会社を休んでいたな。よほど悲しかったと思うよ、もうすぐ結婚って話も出始めていたって言ってたしな」
「今の浩さんとはえらい違いね」
「うん、最近はやっと元気を取り戻し始めてきて、減ってしまった体重も、今は元に戻りつつあるって....」
「なかなか忘れられないよね、相当想い合っていたと思うもの。私だってミヤにもしもの事があったら....、居てもたってもいられないもの」
「ありがとうミイ。そこまで想ってもらって嬉しいよ」
「うん」
「でも最近はなんか、浩さん、なぜか ココ ”はまちゃん”に行こうって良く誘われるんだ。どうしてかな?」
「....って事は、浩さんは今フリーなんだね」
「取りあえずはそういう事かな......」
「そっかぁ~.......」
「?」
(???(作))
□ □ □
実は、浩二は3年前まで、彼女がいた。
その彼女に病気が見つかり、闘病の末、3年前に亡くなった。
その事を今でも引きずっている浩二は、それ以降新しい出会いには、消極的になっていた。 そんな時、最近になって、いつもの”はまちゃん”で、思いがけない出会いがあった。
その人物は 岡田 真由。ミィと大学時代の友人である。
驚いた事に、面影と仕草が、亡くなった彼女と被るところがあり、浩二はその真由を、たまに来る”はまちゃん”で時々見かけ、今ではミヤとミイ経由で、結構仲良く喋るまでになった。
今では ”はまちゃん”に来ると、いつも真由が居ないか気になって、周りを気にしてしまう様になっていた。
□ □ □
二人で30分くらいフードコートで楽しい時間を過ごしていると、ミイの母親からメッセージが来た。
『いつまでコンビニにいるの? もう10時過ぎよ!』
いつもの心配メッセージ。
即答で『今 帰るところだよ』と送って、ミヤに 口を尖らせた顔を向ける。
(そんな事しても、可愛いだけだぞ ミイ(ミヤ))
さらに。
『ミイ 誰かといるの?』
と聞いてきたので。
『夜だから、ミヤについて来てもらってるから、大丈夫だよ。もう帰るし』
『それなら安心ね。気を付けて帰ってきてね』
と、言われた。
再びすごいなオレ、絶大なる信頼感が浜家にはあるんだな。 とミヤは思った。
「仕方ないから、帰ろっか」
「そうだな。 心配してるし」
二人でそう言い、フードコート横にある、ごみ箱に飲み終えた後の包装などを入れ、二人でコンビニを出て、仲良く手を組み繋いで帰っていくのだった。
※ 作者からのお断り
この小説“雅と雅”は、当初は、この(C)編から書き始めた小説なので、この(C)編の第一話の冒頭が 雅たちの身の回りの紹介が入っています。
前二作(A,B編)は、最終編である(E)編が終了してから書き足した、雅たちの幼少期からを付け足したものなので、紹介文染みたものが、この辺で被ってしまいました。
なので、取って付けた様な個所も多々ありますが、いつもの様に“ゆる~り”と勘弁してやってください。
では、この後も何げない 雅 たちの日常をガマンしながらお読みください。
本当に来ていただいて、ありがとうございます
雅也