プロローグ・2
ふと我にかえってみるとそこは見慣れた路地ではなかった。右側には小さな公園があり、明かりはその公園の中央に壊れかけの街灯が一つあるくらいで不気味に薄暗い。周りに家は建っているが人の気配はまったくしない。こんなところ早く離れてもとの道に戻ろうと、引き返そうとしたとき、街灯の陰に人影が見えた。。街灯の近くに来るとさっきの人影がハッキリと認識できる。そこには赤いワンピースを着た女性が1人、街灯にもたれかかって立ち呆けていた。
「…おい、あんたこんなトコで何やってんだ?」
なんとなく気になって声をかけてみたが何も反応がない。声でダメなら肩に触れてみようとさらに近づいた時、事の重大さに気がついた。その女性のワンピースの赤色は彼女自身の血で染められていたのだ。
「あんた大丈夫か!?」
俺はあわてて女性の正面にまわり、肩をゆすりながら大声で問いかけた。しかし、反応はない。彼女の顔は傷だらけでとても正視できるものではなく、遠くからでは認識できなかったがワンピースも相当傷つき、体中から血が滴っている。
そんな中彼女の目は明らかに何かを見つめていた。俺の方を向いてはいるが、焦点がまるで俺を捉えていない。俺の頭上を通り越して更に後ろの何かを見ている、そんな感じだ。そう思った瞬間、背後にいやな気配を感じた。振り返ってはいけない、そう思いながら頭が自然に後ろを向く。次の瞬間、俺は暗闇の中にいた。
「……ウ……ろ」
なんだ? 声が聞こえる。
「リ…ウ」
俺を呼んでんのか? 待ってろ、今そっちに行くから。
「リョウ!」
怒鳴んなようるせぇな。
「…リョウ! 起きろ!」
「……ん?」
「ったく、やっと起きたか…」
あれ? さっきまで俺は…
「ま〜だ寝ぼけてんな、お前」
「…っと、ここは…?」
「学校に決まってんだろ… いつまで寝ぼけてんだ、もう昼休みだぜ」
「えぇと… マモル…? 俺はいつから寝てたんだ?」
「1時限目の世界史の時からずっと! 午前中ずっと寝っぱなしだったな」
そうだ、思い出した。 昨日マンガ読んで夜更かししちまったんで朝っからずっと寝てたんだ。 ってことは… さっきのは夢? …それにしてはリアルな夢だった。 目が覚めた今でも鮮明に思い出せる。 アキラのことを思い出しいていたことも… それにしても、一体あの血まみれの女はなんだったんだ? 妙に頭がモヤモヤする。
「お〜い リョウ、起きたんなら 早くメシ食いにいこうぜ!」
俺はマモルに無理やり起こされて、引っ張られながら教室を後にした。