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もう一度、会いに行ってもいいかな。  作者: 白浜ましろ
第一章 精霊、まっさらな旅のはじまり
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精霊召喚(2)

話の分割文量の関係で短いですが本日も更新します。

次回はいつも通りに次の土曜日となります。


 パリスが天幕外へと飛び出すと、ヒョオは天幕の前で頭を上げ虚空を見つめていた。


『ヒョオ……?』


 戸惑い気味に、その背へ彼が声を投げかけた。

 けれども、ヒョオからの反応はない。

 黙ったまま虚空を見つめるばかり。

 ヒョオはマナの揺らぎを感じていた。

 どこからその揺らぎ、気配を強く感じるのか。

 さわりと風が吹き抜けた。

 刹那。ぴくりと身体が跳ねる。

 あ。吐息が虚空にとける。

 捉えた。


『――パリスよ』


 ヒョオが後ろを振り返る。


『なに……?』


 真剣さを帯びたヒョオの眼差しに、パリスに緊張が走る。

 身構えるためか、身体が強張った気がした。けれども。


『精霊がいる』


 それに反し、ヒョオから告げられた言葉はパリスにとっては聞き慣れたもの。

 は。と、パリスの口から吐息がこぼれでた。


『……せい、れい……?』


 ほるりと強張った身体から力が抜けた。

 だが、染み込むようにその言葉の意味を理解したとき。

 え、と。パリスは目を見開いた。


『なん、で……精霊が……?』


 精霊の森といえども。

 なぜ、こんなマナ溜まりが発生している地に精霊がいるのだろう。

 マナ溜まりの地に精霊が降り立てば、いくら精霊でもその影響は受けるのに。

 唖然とした様子のパリスに、ヒョオが言葉を投げかける。


『……我よりも上の位ゆえに、この地のマナ溜まりも浄化出来るやもしれん』


『上の位ってことは、上位精霊……』


『うむ』


 ひとつ頷くヒョオに、パリスはひとりでに納得した。

 なるほど。上位精霊ならば、この濃度のマナ溜まりでも影響を受けないのかもしれない。


『パリスよ』


 ヒョオが真っ直ぐにパリスを見上げる。


『かの精霊を喚んでみるか?』


『……喚べるの、か?』


 パリスに瞳が期待でゆらめく。

 喚べるのならば、その精霊に助力を請いたい。

 さすれば、この状況も打破出来る。

 ヒョオがどうするのかと視線で問いかけてくる。

 ごくりと唾を飲み込み、意を決して頷こうとしたとき。


「パリスっ! 何かあったのか?」


 パリスの背へ隊長が声を投げかけた。

 反射的に彼は振り返り、自分とヒョオとを交互に見やる隊長と目が合った。

 ああ、そうだ。まずは隊長に報告だ。

 上位精霊に助力を請う判断は自分ではない。

 改めて隊長へと向きなおり、パリスは簡単に先程のことを説明する。


「なに、上位精霊が……近くに……?」


「はい。ヒョオが感知したようです」


「そうか」


 隊長がちらとパリスの背後へ視線を投じる。

 それを受けたヒョオはひょんと尾を振った。

 天幕外へと出てきた他の隊員達も、上位精霊という言葉にざわつく。


「それでヒョオ殿は、喚ぶのかと訊いているのだな?」


「はい。助力を請うことが出来るのならば、この状況打破の近道になるのではと思います」


 しかと自分を据えるパリスの瞳に、隊長は短く息をつくと。


「頼む」


 と、厳かに一言告げた。

 パリスは瞠目し、そして。


「ッスっ……!」


 隊長へ普段通りの返事をしてしまったことにも気づかず、くるりと勢いよく振り返えった彼の。


『――ヒョオ、頼む』


 ヒョオを見やる、パリスのその瞳は力強い光を宿していた。


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