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第四話 旅行
翌日。
俺は城に来ていた。
侍女のアンナが扉を三回ノックする。
コンコンコン。
美しい声音が返ってきた。
「エマ様、アベル・サンチェス副騎士団長がお見えになってます」
「アル! 来てくれたのね!」
俺は部屋に入り、生きているエマを見て安堵した表情を引き締めて軽い口調で挨拶する。
「よっ、エマ。この間はデートすっぽかしてすまなかった」
「体調が悪かったんでしょ? アンナに聞いて心配したのよ」
「心配かけてすまない。長旅で疲労が溜まってたんだ。昨日はベッドですぐ寝たよ」
「大丈夫なら、いいけど……。ふふふ、アベル副騎士団長様、デートをすっぽかした代わりに何をしてくれるのかしら?」
「旅行行かないか? 観光地で有名な街があるんだ」
「!」
目を輝かせ微笑んだ顔を向けていた。
「分かったわ! お父様に伝えてからになるけど」
「あぁ」
「楽しみにしてるわ!」
ひとしきり楽しく会話し終え。
城の外を歩いていた。
ある人の場所へと向かっていた。頼むことを受けてくれるだろうか。