出血?
自分の裸体など見ていたところで何もならないので、立ち上がりタンスの上の着替えを取りに行く。
立ち上がると同時に急にめまいが倒れることなくふらつきながらもタンスまで歩く。
血で汚れてしまった白いはずの服とズボンを着る。
相変わらず下着はない。
ふと自分自身の言動に疑問を抱く。
相変わらず?そしてなぜこの服は着てもいいものだとわかったのだ?
テーブルの上の冷めきった肉を横目で見て木製の扉へ向かい歩いていく。
一歩一歩ゆっくりと動かす足は何故か力が入らずたかが数歩の道のりがまるでマラソンの後半のように辛く長い道のりに感じる。
なんとか扉までたどり着き、持てる力を使い扉を押し開ける。
左側を支点とし不自然なほどゆっくりと開く扉の向こう側には木でできた壁と廊下が見える。
やっとの思いで一歩を踏み出し廊下に出て、自分がいた部屋の左右には異なる部屋があることに気づく。
右側には1つそして左側には2つ、さらに下へと続く階段があった。
扉を開けるために不安定な足取りで右に2歩歩き壁に身を預け一休みする。
手を伸ばし重い扉を閉め人の気配のする下の階に歩いていく。
今度は床が軋むことなくまるで気配を消しているかのように誰にも気づかれずに階段へと着く。
壁に手を付きゆっくりと階段を下っていくと突然何かが倒れるような音と声が聞こえた。
「タイチさん!」
小柄の少女が下の階に置かれた大きな机のそばでまるで突き飛ばしたかのように倒れた椅子とコップの間、机から垂れている液体の中に立っていた。
右手をゆっくりとその少女に向かって降って壁に身を預けたまま少し休憩をとる。
彼女の声を聞いてふくよかな長髪を後ろで縛ったポニーテールのような髪型の女性が奥から駆けてくる。
そして自分の背後に気配がして振り返るとそこには彼女がいた。
彼女のワンピースは膝下までの長さがあるが階段の中腹にいる自分からは彼女のきれいな脚が少し見えてしまっていた。
見入ってしまいそうになる自分を抑えて、焦って反対側を向くと小さな少女がこちらに走ってきている。
よく見ると彼女の服は血で汚れてしまっている。
一方で少女には怪我1つ無いようで、堪えきれずに涙が流れている少女の顔を見て無意識のうちに自分はこう言っていた。
「君に怪我がなくてよかったよ。エマ」