出血
意味もなくただ拳を握りしめる自分。
まるで時がゆっくり流れているように周りの状況すべてを認識することができる。
恐怖に支配され無意識のうちに目を強く閉じた自分が聞いたのはとても大きなエマの悲鳴だった。
目を開けるとそこには血だらけの獣がいた。
とっさにエマを見ようとするがその前に痛みに感覚すべてが支配される。
エマはいつの間にか持っていた棒状の何かで獣の頭を獣が食いついている何かと一緒に切り落とした。
血だらけで胴体と頭部が離れてしまった獣の頭部が地面に落ちる。
まだ時はゆっくり流れている。
ゆっくりと地面に落ちた獣の頭部と何か。
その何かはまるで人の腕のような形をしている。
しかし血にまみれた筒状のものは獣の頭部が邪魔をしており、全体像が見えない。
ゆっくりとしたときの中で目を細めその何かを見るとそれはまるで人の腕のような形をしている。
とっさに右腕に目を向ける。
手に持っていた棒状の何かを勢いよく振り下ろしたエマが地面に刺さった棒を抜こうともせずこちらを見つめているのが目に入った。
しかしながら、いつまでも目に入らないものがあった。
結局見つけることができずに意識を失ってしまった。
突然目が覚める。
肉の香りが充満している部屋で目が覚めた。
寝ころんだまま目を開き見覚えのある天井をみて首だけを動かし部屋を見渡す。
見覚えのある本棚、ベッド、タンス、椅子とテーブルそして光が差し込む窓。
なにかとてもひどいことを体験したような気がするが何一つ思い出せない。
寝ぼけている頭にはある女性の泣き叫ぶ顔だけが残っている。
まるで何日間も寝続けたかのようなある種の疲労感と水分への渇望に襲われベッドに座り込み両手を思いっきり伸ばして欠伸をする。
そしてとあることに気付く。
自分が今何一つ身に着けていないことに。