明るい空
マリヤが荷物と手の凍った自分を抱えて街に向かう。
エマは何も言わず子供と手をつないで片手で荷物を運んでいた。
道中自分は一言だけ2人に伝え、それ以外の時間は何も言わなかった。
「すまなかった。」
そう一言だけ言った。
他に何も言えなかった。
ゲルの街についてそこの街のギルドに向かう。
エマがギルドに馬車を用意してもらい、すぐにギゼルの町に向かうことに。
ギルドにいた大柄の男を縛って馬車に積み馬車は走り出す。
帰りの馬車の中でエマに話しかける。
「お父さんのこと、すまなかった。」
「許しませんよ、私は。」
少し鋭い目で自分を見る。
「一生かけて償ってください。
私はもう大事な人が亡くなるのは見たくありません。」
それを聞いて再び涙があふれ出す。
エマが笑って自分を抱きしめる。
やっとの思いでうなずいてエマの胸を離れ座る。
マリヤが魔法で何とか解凍してくれた腕を少し動かし、涙をぬぐう。
エマの横に座る子供に話しかける。
「初めまして。」
エマの背後に隠れる子供を見ていた。
今までの自分はこの子が女の子だということすら気付かなかった。
横に座るマリヤにもたれ、馬車に揺られる。
失った人たちへ思いをはせていた。
町に帰った自分たちはティアさんの家に滞在することにした。
町に入り、懐かしい思い出に涙を流しながらマリヤの家に荷物を取りに行く。
そのあとティアさんの家に入り、ベッドでマリヤと泣き崩れる。
エマは何も言わずに椅子に座り子供と一緒に自分たちの泣き声を聞いていた。
その後エマは父親の後をついでギルドで働く様だ、いきなりトップとはいかないがそれなりの地位をもらった。
自分たちはあの村に戻り、一から村を再開させることを決めた。
まずは自分とマリヤと子供の3人で家を建てるところから始まる。
その子はもう魔法も使えるようで、自分よりも強い。
その子の名前はオリビアと言うようで、マリヤ同様ティアさんからの家名を受け継ぎオリビア・クロードと名前を変えて3人で生きていくこととなった。
どうやら、しばらくはテント住まいが続きそうで、何の知識もない2人がたてようとする家はとても怖くて住めない。
エマが建築士を送ってくれるまでテントに3人で寝る生活は続きそうだ。
雲一つない空を見上げ大きく息を吸い込んだ。
自分たちが、自分がまきこんでしまったことにより多くの人が亡くなってしまったこの村でまずはがれきの処理から始める。
オリビアの家から始める。
オリビアは泣きながらがれきを運ぶ。
自分は掃除をしながらオリビアを見ていた。
骨も残っていないオリビアの家族。
自分もアイラさんの家を片付けるときには涙が止まらなかった。
火の回りが遅かったようで、いくつも骨が上がった。
涙を流しながら、アイラさんの家の一部と、オリビアの家の一部を村の入口に埋める。
この村を見るたびに思い出してあげられるように。
ほとんどが焼けてしまった村の片づけはあっという間に終わってしまう。
ある日、村に向かって進んでくる馬車を3人で出迎える。
馬車から勢いよく降りてきたエマは数人の男を引き連れてやってくる。
エマは勢いよく走って自分に抱き着く。
その日も明るい空が自分たちの頭上に広がっていた。
長い間ご愛読ありがとうございました。
この話でひと段落着いたので1週間ほどお休みをいただきます。
次回の更新は6月8日10時を予定しております。




