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無能の異世界物語  作者: ちくわぶ
初陣
55/127

決戦

マリヤを連れて家を出る。


距離を置いたまま歩き、ギルド内に入る。


ギルド内には体格のいい男と少し高齢の男性がいて、マリヤが2人に話しかける。


少し距離を離し、出店で飲み物を買って飲みながら3人を見ていた。


するとマリヤがこっちを向いて自分を呼ぶ。


3人の後に続いて部屋に入り入り口の横に立つ。


「この2人が例の2人。」


高齢の男性はこちらにお辞儀をして、体格のいい男は自分を無視したまま、椅子に座る。


「名乗る気はない。

今日陽が落ちてから、このギルドの前で落ち合おう。」


高齢の男性はうなずき、体格のいい男は反応を示さない。


「自分のほかの数人の助けも来る。

伝えることは以上だ。」


そう言って部屋の扉を開けて、マリヤの手を乱暴につかみ外に出る。


出てすぐのところでマリヤの頬を思いっきり叩き、しゃがみ込むマリヤを放置して家に向かう。


家に着いてしばらく待っていると、マリヤが返ってくる。


扉を開けて入ると、持っていた荷物を地面に落とし近寄ってくるマリヤ。


怒っているのか顔が赤い、後ずさりながら謝るが聞く耳を持たないマリヤに押され、壁にたたきつけられる。


マリヤは両手を壁につけ、そのまま体を近くへ寄せてくる。


自分が動こうとすると自分の首にかみつき、両手で肩を押して逃げられないように壁にたたきつける。


そして、マリヤは自分の首筋に舌を這わし、腕を自分の脇の下から背中に回し、左手を自分の腰に回す。


逃れようと体を押そうと手を前に出すと、両手首をつかみ、マリヤの胸部へと持っていく。


やばい、と思い周りを見渡すと隠れている彼女と目が合う。


願いを込めて彼女を見つめる。


彼女は咳ばらいを1回する。


とてもやわらかい感触に手が包まれていて、左側の首筋が軽くかまれる。


より、目を大きく開けて彼女を見ると彼女は2度咳ばらいをした。


彼女に気付いて手を止めたマリヤは自分の顔を両手でつかみ無理やりに顔を引きよせて唇を奪った後、奥の部屋に歩いて行った。


必死に笑いをこらえながら歩いてくる彼女を睨みながら


「どうもありがとうございました。」


と皮肉を込めて礼を言うと、彼女はおなかを抑えて笑っていた。


「ティアさんは?」


と聞くと笑いながら寝室を指さす彼女を置き去りにして寝室の扉を開ける。


またうなされている様子のティアさんの腕をさするとうっすらと目を開け、ティアさんがつぶやく。


「マリヤ?」


心臓が口から出そうになるのを抑えて返事をする。


「自分です。」


目をこすりながら起きたティアさんにじろじろ見られていると扉が開いてびしょ濡れのマリヤが部屋に入ってきた。


それを見て、素早く部屋から脱出する。


窓から差し込む光は赤みを増していく。


マリヤが着替えて部屋から出てくると、真っ赤な顔で謝る。


あのマリヤの様子はおかしかった。


「マリヤ、気分は?」


と真面目な顔で聞くと、目をそらしながら


「大丈夫だよ」


とだけ答える。


「そうじゃなくて、あの時どういう気分で、今はどうなのか教えて。」


と聞くと顔をより赤くしながらうつむくマリヤ。


今のマリヤには羞恥心があるようだ。


水を浴びて気持ちを落ち着けたのだろうか?



そんなことを考えているうちにティアさんが部屋から出てくる。


みんな動きやすい服装に着替えて、家を出る。


最後に水を一口飲んでみんなの後に続く。


ギルドへの道を歩いて行く。


暗くなっていく空が自分の高まる気持ちを落ち着けて、明るくなっていく町が逆に気持ちを高めていく。


鼓動が早くなっていき、無意識に横に歩いていた彼女の手に触れる。


彼女の手を強く握りしめ、彼女が自分の手を叩き落とす。


「痛いって!

落ち着きな」


そう言う彼女の表情も硬くなっていた。


ギルド前に着くとあの二人組が待っていた。


高齢の男性が


「よろしくお願いしますね。」


というが誰一人反応することなく歩いて行く。


礼の建物について自分が扉をノックする。


護衛が自分の顔を見て、扉を開けてマリヤを先頭に中に入る。


「ここにいる依頼受注者が、契約違反を受けているとの報告があった!

依頼者はでてこい!」


強い口調で叫んだマリヤは手に持っていた紙を広げて見せるが、真っ暗なこの建物内ではもちろん何の意味もないだろう。


自分がマリヤの前に出て目を凝らす。


あの男を目視しなければいけない。


ゆっくりと歩いてきた男を見て、マリヤさんは後ずさる。


自分のほうを見て睨む。


その目線を無視しながら皆に目をやると、あの2人組はうれしそうな顔でニヤついていた。


マリヤが自分にとびかかってきて自分を殴る。


その様子を嬉しそうに見ている男。


周りに立っている護衛も止めようとはせずに眺めていた。


自分を眺めているマリヤと目を合わせ、マリヤが微笑む。


「やめろ!」


そう自分が叫ぶと、彼女が両手を上に広げ、ティアさんが目をつむる。


自分は体をねじってマリヤを寝ころばせ、マリヤに馬乗りになる。


部屋が一瞬だけ明るくなり、ものすごい爆音が響き、建物内にいるものすべてが吹き飛ぶ。


マリヤは上に乗っている自分を見つめ、腕を首に回そうとしてくる。


それを見た彼女はティアを引っ張り、自分のもとへ寄ってくる。


「水を!」


こちらに近寄ってくるティアさんに声をかけるが反応しない。


このままじゃまずい。


目の前のマリヤにキスをして、口を離したあともう一度叫ぶ。


「水魔法!」


すると急に土砂降りの雨になる一帯。


「2人と男を持て!」


彼女にそう言って、自分の上に乗っているマリヤが持ち上がると同時に立ち上がる。


急いでナイフを取り出して、がれきを切っていく。


豆腐でも切っているかのように軽く切れていくがれきの中に体格のいい男を見つける。


体格のいい男の首を切る。


爆発を聞いて大勢の人が駆けつける。


冷静になったマリヤとティアさんを地面に下ろし戦闘態勢に入る。


ティアさんを守るようにマリヤ、彼女、自分そしてティアさんの順番で並ぶ。


遠くから放たれる魔法はすべて消えていく。


2人の男がマリヤに襲い掛かる。


マリヤはとびかかってきた1人目の男の顔にけりを入れて地面にそのままたたきつける。


そしてその男が持っていた剣を手にする。


もう一人の男はティアさんのほうへ向かってきて大振りで剣をふるう。


それを彼女ががれきを投げつけ邪魔し、そのすきを見て、ダガーをティアさんに投げる。


ティアさんはそのダガーを受け取り、空中で止まっているその男に刺した。


さらに三人の男がやってきて、マリヤを囲む。


大きな盾を持った男がマリヤに突撃していきよけたところにもう一人が切りかかる。


そこにカウンターを合わせようとするがもう一人が近寄ってくるのを見て再び距離を取るマリヤ。


大きな盾が、距離を取ったマリヤに激突し、飛ばされるマリヤ。


切りかかってきた男のほうを向くが反応が間に合わず目を閉じる。


マリヤに切りかかった男の剣がマリヤに届く前に自分がその男にぶつかる。


バランスを崩した男がこちらに剣を投げ、それが自分の左脚に刺さる。


右手に持っていたダガーを握りしめ、そのあとに切りかかってきた男の剣を受ける。


ティアさんに着けてもらった訓練の時のように、ダガーは折れることなく、男の剣の衝撃を受け流す。


しかし、その後ろから盾をぶつけられ、バランスを崩してしまう。


マリヤはバランスを崩した男に剣を刺し、こちらに向かって走ってきた。


大きな盾は倒れてしまった自分をつぶそうと上からのしかかる。


がれきに助けられて潰されはしなかったものの、体を動かすことはできないほど圧迫されている。


盾の向こう側から剣が交わる音が聞こえる。


盾が軽くなり、右脚で蹴飛ばして何とか抜け出すと、ナイフを持った大男がマリヤに向かって走っていた。


走ることもできずに、持っていたダガーを走っている大男に向かって投げるが、その男が来ていた鎧にはじかれる。


背後から何かでなぐられて振り向くと、そこには2人の男が立っていた。


その向こう側ではティアさんをかばいながら大勢を吹き飛ばしている彼女。


しかし、数の力に圧倒され、劣勢のようにも見える。


あたまが真っ白になり目の前の男の剣を受けようと腕をあげる。


しかし、その一撃は決して振り下ろされることはなかった。


目の前の男は剣を振り下ろす途中で固まっていた。


その男だけではなく、すべてのものが固まっていた。


まるで、時間が止まったかのように。

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