マリヤの過去
マリヤは涙を流しながらこう続けた。
「私はもともととある国で働いていたの。
ある時、その国で暴動がおきて、私が働いていたところも標的にされた。
その時命の危険を感じて、その国を逃げ出した。
でもあの男はある街の領主で国にクーデターを仕掛けようとしていた。
それであの男は私に国の警備情報と交換に身の安全を保障すると提案してきた。」
涙を流しながら少し息を吸って再び話し始めるマリヤ。
「もちろん、私は断ったわ。
国にばれたら指名手配されるし、何よりもあの男を信じられなかったから。
だから私は身を隠すために盗賊の一団に入ったの。」
そう言うとマリヤは立ち上がりキッチンへ歩く。
「私が入った盗賊はとても規模が大きかったわ。
それこそ、街の兵士じゃ下っ端にしか手が出せない程度の大きさ。
その盗賊の力を使ってあの男から逃げようとしたの。」
棚の中から小さな箱を出し、それをもって椅子に座るマリヤ。
「でも、盗賊暮らしをしたいわけじゃなかった私は逃げ出したの。
でも、それもばれて囲まれた。
その時に助けてくれたのがティアよ。」
箱を開けて取り出したのはティアの部屋で見たダガー。
「ティアが助けてくれて、そのままギルド内での仕事をくれた。
私もあなたのようにティアに助けられたの。
でも私は盗賊を甘く見ていた。
やつらは私がギルドで働いていることを知ってギルド内の情報を渡すように言ってきたの。
私は逆らうことができなかった。」
そう言ってダガーを自らの首筋にあてるマリヤ
「私が死ねばあの男もこの町にいる必要は亡くなる。
そして、ギルド職員の死に関わっていることが昭機になればこの町にもいられなくなるわ。
ごめんなさい。
ティアにも伝えて、本当にごめんなさいって。
あなたたちを傷つける気はなかったの。
私は・・ただ・・」
マリヤの目からは涙があふれ、感情の高ぶりから、しゃべることもままならなくなってしまう。
「私も・・普通の人みたいに・・普通の人生が・・・送りたかった・・・・
私が・・守った人たち・・みたいに・・普通に生きてみたかった・・・」
そう言ってマリヤが目をつぶった瞬間、机の上に乗りマリヤの右手に飛びつく。
マリヤはその場に倒れ、ダガーを持っている右手を両手を使い抑える。
「いや!
離して!!」
そう叫ぶマリヤを無視して自分の右手でマリヤの左手を抑え、地面に押し倒す体制になる。
目をつむって首を振っているマリヤの上に馬乗りになり叫ぶ。
「こっちを見ろ!」
マリヤの首の動きが止まり、ゆっくりと目が明いて自分の顔を見る。
「俺が何とかする。」
そう言うと、ダガーが地面に落ちて、マリヤの鳴き声が響き始めた。




