治療
突如、叫び声をあげながら上半身を起こし起き上がった自分。
それを見て二人の女性が自分に飛びついてきた。
2人ともこびりついた血が渇いた服で、泣いていた。
「お、おはようございます。」
何一つ悪いことはしていないはずなのになぜか申し訳なく思ってしまう自分。
2人は何も言わずただ泣いていた。
しばらく泣くと、ティアさんは数人の男性に連れていかれた。
マリヤ曰くギルドの関係者の様だ。
大事にする気が無いとは言え、ギルド関係者であるティアさんが利用者である自分を理由もなしに刺したことは、町に残っている血液と、多くの人が聞いた悲鳴の後では隠ぺいすることは不可能であると判断したのであろう。
「落ち着きましたか?」
と自分と同じベッドに寝ているマリヤに尋ねる。
「そんなわけないでしょう?
目の前で血だらけの人が倒れて、その最後の一言が別の女の名前なのよ?」
とてもとげがある口調で返してくるマリヤ。
「すみません。ほかに頼る人が思い浮かばなくて。」
「すぐ近くにギルドがあったのに?」
不満そうな顔で自分を睨みつけるマリヤ。
「あんまり興奮すると体に悪いので・・・
一応かなりの血を失ったみたいですし。」
そうベッドから出ることを促すと、ベッドの外にでて嬉しそうに微笑みながら
「へぇ~興奮するんだぁ~」
と楽しそうにからかってくる。
「本当にやめましょう」
そう言うと少し不満そうな顔をするがとてもうれしそうな顔でこちらを見つめていた。
「ティナさんのことなんですが・・・」
そう言ったとたん、人が変わったかのように表情が変わるマリヤ。
マリヤは真面目な顔で話し始める。
「そのことは私がどうにかするから、あなたは体を治すことに集中しなさい。
しばらくはここに泊まることになるけど、私が尽くしてあげるから!」
しかし、後半はふざけたマリヤに戻ってしまう。
もしかしてこの人に殺されるんじゃないかな自分・・・
本気で命の危機を感じているとマリヤの服が目に入る。
「すいません、自分の血でべとべとですよね。」
「さっきから謝ってばっかり、とりあえず早く傷治しなさい。」
そう言って軽く頭を小突き部屋を出ていくマリヤ。
マリヤなりに励まそうとしてくれていたんだろうな。
ふと頭によぎるのは、意識を失う直前にみたマリヤの顔だった。




