出血
ティアさんの家に入るといつもはついているはずの灯が付いていなかった。
なぜかティアさんは家に人がいないときにも灯を灯したまま家を出る。
訓練で使っていた剣を構えゆっくりと臨戦態勢のまま部屋に入る。
少し目が慣れるまで足を止め、寝室へ歩く。
布団が不自然に盛り上がっており剣を構えつつ布団をはがす。
そこには何かを握って寝ているティアさんがいた。
膝を床に着け、ベッドに両腕を乗せる。
ティアさんは眠っているようなので起こさずにそのまま部屋の扉を閉めて、その前に座って寝ようとした。
疲れているからだとは言え、座って寝るのは慣れていないので、まったく眠気が来ず暗闇の中でただ目を閉じていた。
少しづつ心地いい眠気が襲ってきたときに急に叫び声がする。
襲ってきた眠気が吹っ飛んでいき急いで立ち上がると、そのまま扉をけ破って中に入る。
先ほどまで布団にこもっていたティアさんは錯乱しているようでベッドから立ち上がり、自分の家の真っ暗な寝室でキョロキョロと周りを見渡している。
「ティアさん??」
そう問いかけるが、答えることはなくクローゼットの上のダガーをつかみそれを構えた。
突然の行動に反応できないままとっさにティアさんを抑えようとダガーめがけてとびかかる。
錯乱しているティアさんはダガーをとびかかってきた自分の肩に突き刺す。
肩に鋭い激痛が走るが、そのままティアさんを壁に押さえつけ両手首をつかみ壁に押し付ける。
窓から入る、うっすらとした光が自分の顔を照らし先ほどまで自分の肩が当たっていたティアさんの胸部、そして血で汚れているダガーを見て金切り声を上げる。
どうすればいいかわからない自分はそのままティアさんを自分の胸に抱きよせ血で肌にくっつく自分の服に押し当てた。
ティアさんは手足をじたばたさせ、この状況から脱出しようとしているように思える。
強く押さえつけようとすればするほど、肩からの出血は強さを増し、自分の胸にいるティアさんは血でまみれてしまう。
ティアさんが落ち着き再び眠りに落ちるまで、出血で遠のく意識を離さないように力を振り絞っていた。
ティアさんが眠りに落ちると、その場に寝かせ、自分の服を脱いで肩にできる限りの力で巻き付ける。
今頼れるのは1人だけ血があふれ出る箇所を抑えながら、そのまま家を飛び出した。




