訓練-3
川の水で口をゆすぎマリヤのほうまで歩いていく。
夕陽が川の水に反射して少しまぶしく感じるが、まっすぐ夕陽を見つめるマリヤを見て、何も言えずに近くの岩に座る。
「なんなら私の横に座ってもよかったのにー」
とからかうマリヤを無視して、質問する。
「急にどうしたんですか?
話なんてらしくない。」
マリヤは少しうつむいて自分を見つめる。
その瞳は今にも泣きだしそうで、たまらず自分はマリヤの横に移動し座る。
岩に置かれていた右手を手に取り両手で包む。
マリヤはこちらを向きもせずに自分の手を強く握り返していた。
「君はなんで強くなろうと思うの?」
少しかすれた声でぼそりとつぶやくマリヤ。
「自分には守りたい人がいるんです。
その人は自分よりも強いんですけどね。」
少し自虐的に笑いながら優しい声で返事をする。
「それって・・・」
何かを言おうとしてこちらを向き、言いかけた何かを飲み込んだマリヤ。
自分は手を握ったまま立ち上がりマリヤの顔の前に座り込んで、目を見つめる。
「もちろんあなたもです。
たとえどんなにあなたがうざくても、どんなに腹を蹴られても守りたいと思っています。」
それを聞いたマリヤはもう一度何か、言いづらいことを言おうとしている。
「あ・・・あのね、私・・」
川のせせらぎと風に揺らされる葉がこすれ合う音が二人を包み、すぐに静寂に戻る。
マリヤは今まで自分が見たこともないような冷たい表情をしていて、背筋が一瞬にして凍る。
赤く輝いているマリヤの顔に走る2本の線は、マリヤの手に拭われる。
「ごめんね、何でもない。
先に帰ってるね!」
そう呟いて走り去るマリヤ。
マリヤが走り去ると先ほど急に吹き抜けた風も、心を落ち着かせるせせらぎも聞こえなく、まるで自分の心を表しているような寂しい世界になってしまった。
1人ギルドに向かい歩く。
もう日は沈んでしまい、暗くなった道を1人歩いていく。
何も考えたくはなく、空っぽの頭のまま歩いていると、遠くに大柄の男と不思議な気配のする男が見えた。
その人たちを無意識のうちに目で追っていると町へと架かる橋に仮面をつけた彼女が見えた気がした。
急いで彼女に向かって走る。町に入ってまっすぐ行きギルドにつく。
彼女を探してあたりを見回すが見当たらない。
悩みや、精神的な疲れが一気に来た気がして無気力のままティアさんの家に向かって歩いて行った。




