マリヤの逆襲
目が覚める。
昨日ティアさんの家に来たとこまでは覚えているが、そのあとに寝てしまっていたようだ。
ベッドから起き上がろうとするが、体中に激痛が走り思わず声を上げてしまう。
向こうの部屋からティアさんがやってきて微笑みながら近づいてきた。
「よく寝た?」
と笑顔で問いかけてきて起き上がれない自分の枕元に腕をついて床に膝をつく。
甘いいい香りが一層強くなり、自分の目を覚ます。
「今日は動けなさそうだね。」
と嬉しそうに言うと、立ち上がり部屋を出ようと歩いて行った。
「すみません。自分汚いのにベッド貸していただいて・・」
と言うと足を止めて
「あなたは汚くなんかないよ?」
と振り返らずに言って部屋を出ていく。
向こうの部屋から叫ぶように話しかけてくるティアさんの声が聞こえる。
「今日私は帰ってこないけど食べるもの作っておくし、夕方くらいにマリヤが見に来ると思うから今日はゆっくり休んでて!」
嬉しそうな声で叫ぶティアさんに少し大きな声で心からのお願いをする。
「マリヤだけは・・・やめてくださいー!!」
向こうの部屋で笑い声がして、美味しそうな匂いが漂ってくる。
「そんなこと言うなんてひどいなー!」
とやけに上機嫌のマリヤが部屋に入ってくる。
静かに扉を閉めて、満面の笑みでゆっくりと近づいてくるマリヤを目にして、逃げることもできない自分はただ祈りを込めて目を閉じる。
ベッドのそばまで来るとマリヤは左脚を自分の脚の間に無理やりねじ込み、痛みで悲鳴を上げそうになる自分の口を左手で塞ぐ。
右脚をゆっくりと自分の左脚の横に置き右手を自分の頭のすぐ横に。
そして顔を一気に自分の右耳に近づけると
「私だけ呼び捨てなんだ。
特別扱いしてくれてるのかな?」
と囁いてそのまま右手を自分の右腕のあたりまで持ってきて力強く掴んだ。
マリヤの細い指が断裂している自分の筋細胞を刺激して、腕に痛みが走る。
痛みに耐えようと無意識のうちに手を強く握ってしまいそこにも痛みが走る。
悲鳴を上げて助けを呼ぼうとするが口を力強く塞いでいるマリヤの手に阻まれ、悲鳴が声にならない。
満足そうな笑顔を浮かべながら再び耳元まで顔を持ってきたマリヤは
「特別扱いしてくれるのはうれしいけど、乙女心を傷つけないように注意しないと痛い目に合うよ。
わかった?」
と囁き、抑えられた口で一生懸命肯定の返事を返すが声になることはない。
「聞こえないな~」
と言いながらマリヤの胸を自分の胸に当てる。
再び声にならない悲鳴を上げて急いで首を縦に振る。
それを見たマリヤはそのまま胸をわざと押し付けながら腰を引き胸を押し付けている部分を移動する。
痛みに悶えていると、ついに祈りが通じたのか部屋をノックする音が聞こえた。
ゆっくりと扉が開き、ティアさんが入ってくると、いつの間にかベッドわきに立っていたマリヤが明るく大きな声で言った。
「ご飯できたよ!」




