寝床探し
ギルド前について、照れくささゆえについ手を放してしまう。
無言の気まずさに耐えられず周りを見渡す。
かなり暗くなった町には多くの人が歩いていて、身長の高い男を中心としたグループやデートに出かけるカップル、一日の疲れをいやすために酒などを買いに出歩く人々。
これからが本番だというように活気を増していく街並みを見て照れくささが増してしまう。
ギルド前についてティアさんの顔を見て、目が合うと悲しそうな表情でつぶやいた。
「じゃあ、また明日ね。」
そう言って、ギルドの中に入っていくティアさんの背中を見つめながら少しずつ冷たくなっていく風にうたれていた。
とりあえず、今日の寝る場所を見つけなければいけないので、町中を歩くことにする。
ギルドから北に大通りを歩いていく。
急に店がなくなっていき、住宅ばかりになる。
門までの道を疲れ切った体を引きずって30分ほど歩くとベンチがある広場を見つけた。
そこで、自分の荷物を返してもらってないことに気付いて深くため息をついて今来た道を戻る。
ギルドにつくといつもとは違う場所にいるマリヤが目に入る。
大柄の男と言い争っているマリヤに向かっていく。
マリヤがこちらに気付いて大柄の男がこちらを見る、そしてすぐ去っていった。
「大丈夫ですか?」
疲れた顔をしているマリヤにそう声をかけゆっくりと歩いていく。
「ええ、少しね。」
ふざけることなくそう返すマリヤを見て目を丸くする。
「自分の荷物を返してもらおうと思ったんですが、ティアさんいます?」
驚いたことを悟られないようにすぐに会話を切り替え平常心を取り戻す。
「あぁ、あなたの荷物なら預かってるわよ。」
「迷惑かけてすいません。どこにありますか?」
怖いくらいに淡々と進んでいく会話に不快感を感じる。
仕事モードなのか真面目なマリヤは少し怖く、あまりすきにはなれない。
「家よ。」
いつもなら"そういうのいいですから"と言ってしまうところだが、今日の感じからして本当なのだろう。
そこにマリヤの後ろから歩いてくるティアさんが見えた。
「あら、どうしたの?」
そう言って会話に入ってくる。
さっき別れるまでの悲しそうな感じではなく、仕事用の少し冷たい感じで淡々と話す。
「自分の荷物を預かってもらってるみたいで。」
そう言うと、急に足から力が抜けふらつく。
おそらくティアさんが来たことで気が抜けたのだろう、そう言ってしまうほど今日のマリヤは苦手だ。
ふらついた自分をとっさに支えるティアさんと、マリヤさん。
人の少ない時間帯とは言え、異なるタイプの美人2人に肩を貸してもらっている自分はかなり目立ってしまっている。
「私が後で取りに行くから、あなたは先に休んでおいたほうがいいわ。」
そうティアさんが提案する。
「わかりました。
北のほうにあった広場で寝てますので、お願いします。」
と言うと、少し固まった後怒ったように聞き直すティアさん。
「え、どこ?」
「ベンチがある広場です。そこの道をまっすぐ行ったところにある。
手持ちがないのでそこで寝ようかと思っていて。」
急に表情が生き生きしだして会話に興味を持つマリヤと、呆れたような怒った顔でこっちを睨んでいるティアさん。
「もういいわ、今日は家に来なさい。」
頭を押さえながらそう言ったティアさんはワクワクを抑えきれない様子のマリヤをどこかに追い払っていた。




