昼食
ギルド内に入ると遠くにマリヤがいた。
カウンターの向こう側にいて大柄な男性の対応をしていた。
不自然に目線をそらしながらいつもの部屋の方へ歩いていき、カウンターの前を通るときだけ軽く会釈をして通り過ぎる。
部屋に入り椅子に座って一息つく。
殺風景な部屋だが、一人になれたことでとても落ち着く。
しばらく待つと扉がノックされ、自分が答える前に扉が開いた。
マリヤが勢いよく入ってきて、そのあとにティアさんがいいにおいのする何かを持って入ってくる。
そのままマリヤは座っている自分の背後まで歩いてきて立ち止まる。
緊張で体に力を入れる自分の肩に手を置いて耳元でささやく。
「裸の女性をおいて逃げるなんて、失礼だぞ。」
何も言わず勢いよく立ち上がり、自分が座っていた椅子は少し後退する。
非常に運が悪いことにそれは自分の背後に立っていた人に当たってしまう。
「あ、すいません」
と言って、ティアさんの方へと駆け寄る。
ティアさんが持っていたものを受け取り机に置く。
「本当に仲良くなったのね。」
とティアさんは呆れた顔でつぶやいた。
ティアさんは昼食を2人分買ってきてくれたようで紙に包まれた串焼きを4本と、肉と野菜がたれと和えられたものをパンではさんだものを2つ買ってきてくれた。
「さぁ食べましょ!」
と無邪気な笑顔で言ったティアさん。
その笑顔を前にして断れるはずもなく椅子に座った。
ティアさんもマリヤを部屋の外に追い出して、椅子に座った。
「この串焼きは君が受け止めてた魔物なんだよ。」
自分が串焼きに手を伸ばしたのを見て、同じように串焼きを手に取るティアさん。
自分が大きく肉をかじるのを見て嬉しそうに微笑んだ。
塩で味付けしてあり、その肉はとても肉厚で食べ応えがあった。
串焼きの肉を一口かじり、口元を手で押さえながら言うティアさん。
そしてもう一品を目で見ながらつづけた。
「そしてこっちはウサギの肉を使っているの。」
「君は魔法が使えないから、狩りには向いてないかもね」
少し残念そうな顔でつぶやいたあと、自分の目をしっかりと見つめてこう宣言した。
「だから私があなたを鍛えてあげるよ。」




