飢えと渇き
飢えと渇きに苦しみながら人の少ない街中を歩く。
荷物をわきに抱え、町を歩く人に目を向ける。
武器や鎧を身に着けている人がギルドに近づくにつれて増えていく。
町一番の建物であるギルドの前には多くの人が集まっていた。
グループを作り、町の出入り口に向かって歩いていく人々を横目に見て歩いているとギルドの前につく。
ギルドの入り口前には見慣れた女性が立っていた。
おおよそ160㎝の女性、特徴的な茶髪が目立つため一目でわかった。
昨日見た時よりも軽装で少し余裕があり、体にあまりフィットしていない服装だった。
「遅くなってすみません、ティナさん」
後ろから駆け足で近寄り声をかける。
振り向いてこちらを見たティナさんはとても女性的な顔立ちをしていて、大きな瞳と柔らかそうな唇が少し妖艶さを醸し出していた。
目が合い挨拶を交わすが、少しずつ目線が自分の荷物に移っていく。
とても大きな溜息ギルドに向かって歩き始め不機嫌そうな声で一言つぶやいた。
「ついてきなさい。」
昨日の部屋に向かって歩いていくティナさん、荷物を抱え昨日のようについていく自分。
昨日と同じようにキョロキョロと周りを見回しながら歩いていく自分の目に風になびく綺麗な髪が飛び込んだ。
足を止め遠くに歩いている長髪の女性を見つめる。
綺麗に輝く金髪の長髪を風になびかせ、歩く細身の女性、その顔にはひげが生えた男性の顔をかたどった仮面がはめられていた。
そのまま彼女に見惚れているとお腹が鳴り、一度目線をさげる。
先ほどよりも怖い顔をしたティアさんが自分を待っていた。
いつの間にか落ちていた荷物を拾い上げナイフをポケットにしまう。
苦笑いでごまかそうとするがそう上手くはいかず、乱暴に自分の腕をつかみ力強く引っ張っていく。
昨日の部屋の中に投げ飛ばされると怖い顔のティアさんに大きな声で言われる。
「そこで待ってなさい!」
そう言って部屋を出ていったティアさんを数分待つと、パンとスープを持って帰ってきた。
それを自分の前に乱暴に置き、少し飛び散ったスープを目で追う自分に
「早く食べて行くわよ!」
と叫び、自分の荷物をつかんで部屋を出て行ってしまった。
久しぶりに何かを口にする自分は一口でパンの半分をかじり、少し咀嚼するとスープを口に運ぶ。
シンプルなこの朝食がとてもおいしく感じる、涙が出そうになっていた。
実際に出ていたのかもしれない。
あっという間に完食した自分は大きく深呼吸をして部屋を出た。
ティナさんは怖い顔を保ったまま部屋の外で待っていて自分の顔を見ると少し笑い、外に向かって歩き始めた。
飢えと渇きにおさらばした自分は上機嫌になりつつも冷静を装いつつティアさんの後ろを歩いて行った。




