初夜
マリヤの家は今朝自分が通った橋の近くにあった。
ギルドからここまで15分ほどあるいたが、彼女の声はギルドでの声とは異なりとても聞きやすく、月明かりに照らされる彼女の顔は見とれてしまうほど美しかった。
「おじゃまします。」
マリヤの美しい顔を見て少し緊張してしまい、つい口から出てしまった。
それを聞いていたマリヤは不思議な顔をして自分の顔を見ていた。
マリヤの家は入ってすぐの部屋に簡素な机といすがあり、その奥にはあまり使用感の無いキッチンがあった。
マリヤの話し方からは全く想像もつかないほどシンプルであった。
「おなかすいたねー」
といったマリヤは入り口に立ったまま動けない自分を無視して部屋の中に明かりを灯し、奥の部屋に走っていく。
左側にある窓は横の家の壁が一望でき、隣の家の壁との間は小柄な人1人が何とか通れるような狭さだった。
きっとこれは故意に狭くして空き巣などを防ぐためだろう。
小柄な男性がやっとの道を盗んだ荷物を抱えて歩くのは簡単ではない。
それにプライバシーも考慮して窓の位置なども決まっていそうだ。
そんなことを考えていると楽そうな服に着替えたマリヤが部屋から出てきた。
ちらっと見えた部屋の中もやはりとてもきれいに整理整頓されているようだった。
「自分はどこで寝ればいいですか?」
いつの間にか警戒心も緩んでいて少し砕けた形で話し始めてしまった自分。
マリヤは自分の質問を聞いて嬉しそうに口角を上げ、意地の悪そうな眼付きで
「もちろんベッドだよ!」
と言って自分を奥の部屋まで引っ張って行った。
美人にこのような冗談を言われて悪い気はしない、が明らかに冗談なので適当に流しておく。
マリヤの服装はかなり薄めで目を凝らすといろいろと見えてしまいそうだ。
「とりあえず、自分はもう寝ます!」
焦って話を切り替えようとするが、マリヤは自分に水浴びをするようにと言った。
「私のベッドを汚す気?」
と小悪魔的な笑みを浮かべキッチンへと歩いて行った。
マリヤに言われた部屋に行くと四角く狭い部屋で、窓一つなかった。
言われた通り服を脱いでその部屋にいると、突然マリヤが入ってきた。服を着ている状態で。
パニックになり手を前で組みながら後ずさりするが部屋が狭く距離をとれない。
「水浴びするんだから出てってよ」
そういうとマリヤはニやつきながら
「魔法が使えない君はいったいどうやって水を浴びるのかなー??」
とこちらに滲み寄りながら言った。
自分が壁際に追い詰められたところで突然何かをつぶやくマリヤ。
すると上から滝のように水が流れてきた。
びっくりして悲鳴を上げる自分を見て大笑いしながらマリヤは出ていった。
怒ればいいのか喜べばいいのかよくわからない混乱した自分はとりあえず忘れることにした。
寒さに震えながら服を着てさっきの部屋まで戻る。
結局どこで眠ればいいのかわからないので部屋の片隅に寝転がり、水浴びをする前に置いた自分のカバンを枕にして目を閉じた。




