謝罪
声をかけて少し待つ。
が、返事は帰ってこない。
出直すか。。。と思い自分の使っている部屋に戻ろうとすると彼女の部屋の扉があいた。
少し驚きながらも彼女のうなずきを見てから、彼女の部屋に入った。
「何があったかを説明してもらえると助かります。」
彼女の部屋に入るやいなや、彼女を目の前にして真っ白になってしまった自分は挨拶もなく質問を投げかけていた。
「悲鳴を聞いて助けに行った。それだけ」
と冷たく、短く背中越しの自分に答えた彼女はベッドに座った。
彼女に聞きたいことはいろいろあったが何から始めればいいのかわからずとりあえず落ち着くために深呼吸をする。
「あの・・・自分の腕は?」
緊張している自分の口からはちぐはぐな言葉しか出てこない。
気のせいか彼女の顔が険しくなったような気がした。
「知らない。」
語尾を強めて彼女は答えた。
「あなたはいったい何者なの」
こちらをにらんでいる彼女が訪ねてきた。
「尾崎太一です。」
何者なんて聞かれても。。。と戸惑いながら答えた。
自分のことを知りたかったらもっといろいろ質問してよ!と内心思ったが彼女と同じ部屋にいる緊張感で、冗談も言えなくなっていた。
彼女は不満そうな顔をして自分をにらみ続けている。
何とかしてこの空気を変えたかった自分はずっと気になっていたことを質問した。
「あなたの・・お名前は?」
彼女は答える気が無いようでにらみを利かせたまま動かない。
突然床がきしむ音が聞こえエマが部屋を覗いていることに気付く。
「あ・・すいません。タイチさんとお話ししたくて・・・」
と少し鼻声で申し訳なさそうにつぶやいたエマから彼女に視線を戻そうとするが突然何かに部屋の外まで突き飛ばされる。
壁にたたきつけられてはいないものの、弱った体には少しキツイ。。。
エマと顔を見合わせ、涙目でこちらを見上げている少女に
「とりあえず、部屋行こうか」
と言い、部屋に入る。
相変わらず肉のにおいが充満している部屋、机の上にある肉はいつの間にかなくなっていた。
「とりあえず、座ってよ。」
と小さな声でエマに言うと、少女は椅子の前までうつむいたまま歩いていき座らずに固まってしまった。
「あの・・・」
ととても小さな声で呟き必死に涙をこらえてこう添えた。
「本当にすみませんでした。」
なんでエマが謝るのか理解できない自分だったがとりあえず笑顔を保ったまま
「気にしないで、君が悪いんじゃないし。」
とできる限りの優しい声で言った。
少女は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべ軽く返事をしたのち挨拶をして部屋を出て行ってしまった。
気の利いた言葉が出てこない自分は何も言わず光を受けて歩いていく悲しそうな少女の背中を見送った。
いろいろなことがあった1日?だった。
そしてとあることが頭に浮かんでいた。




