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無能の異世界物語  作者: ちくわぶ
新世代
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呪い

今まで起きた様々な出来事が頭に浮かんでくる。


今までの人生を振り返るように記憶が頭をめぐる。


今まで、悲しいことも多かったけれど、楽しいこともいっぱいあったな・・・


今までの記憶の中でおかしなところに気付く。


魔法が聞きづらい俺の体質、エマさんに凍らされた時も、寒さを感じなかった。


いつもグレイスが俺を的にして魔法を練習していた。


俺は魔法を受け止めることもできる。


シオンが洗脳できないのも俺だけ。


そして、あの男に傷を負わせれたのも俺だけ?


違和感を感じながら誰かに呼ばれたような気がして目を開ける。




「予想外の展開もあって楽しめた!!」


倒れている父と母に語り掛ける男。


「こんな日にはお酒でも飲みたくなるな!!」


嬉しそうに叫んだ男は俺の周りに集まるみんなのほうに歩いてくる。


俺は泣きながら俺を治療する姉を見た。


このままじゃグレイスが!


声に出そうとするが出ない。


目の前の俺が立ち上がる。


俺の体がこっちを向いて優しい微笑みを浮かべる。


その姿を見てなぜか女神と錯覚してしまう。


ティアさんが涙を浮かべて叫ぶ。


「遅すぎるわよ!!」


俺の体は気絶しているグレイスの傷に触れて、傷をいやした。


姉が俺の体を見て、何かをつぶやいた。


俺の体は姉に微笑み頭を撫でた。


「久しぶりね、タイチ君。」


俺の体は女性のような声で父に話しかける。


倒れている父と母が顔を上げて俺の体を見る。


父と母の目から涙があふれ出す。


「何が起こっている?」


そう言った男は急に壁にたたきつけられ身動きが取れなくなる。


「美樹・・・・

すまなかった・・」


俺の体に話しかける父。


ミキ?


女神としてあがめられているあの女性・・?


俺の体は2人の元まで歩き、2人に触れた。


「いいのよ。

あなたたちが元気なら。」


そう言ったとたん、2人の傷がすべて消えた。


母の頭を小突いた俺の体。


「私のタイチ君をとったんだからもう少し女性らしくなりなさい。」


そう言って今度はティアさんのもとへ歩いて行く。


「待たせたわね。」


そう言ってティアさんに触れる。


ティアさんのからだはまぶしく輝いて行く。


「本当に長かったわ。

でも、またみんなに会えて幸せだったわ。」


そう言ってティアさんは笑顔で消えてしまった。


「辛い思いさせてしまったわね。」


そう言って姉を抱きしめる俺の体。


姉はただ泣きじゃくるばかりだった。


気を失っているグレイスを見て微笑んだ。


「オリビア、この子はあなたのことを愛しているわ。

血はつながってないしもう関係を持ってしまったのだから早くくっついてちゃいなさい。

じゃないとこの女の子にとられるわよ。」


そう言いながら俺の体を指さす。


両親が驚いて立ち上がる。


笑顔を浮かべて2人を見た俺の体は男に向かって手を伸ばす。


「この子が魔法を使えないのはあなたのせいじゃないわ。

私がいたからよ。」


最後にそう呟いて男のほうへ歩いて行く。


「私の人生で唯一殺したいと思った人。」


女神とはかけ離れた雰囲気を纏って、男を睨んだ俺の体。


何も言わずに拳を握ると男の身体がつぶれてあたりに血が飛び散る。


「私はもう消えるけど、元気でね。

たった一人の私の愛したヒーローさん。」


笑顔で呟いた女性がこっちを見て俺は体に戻される。


急に体が動かせるようになり、ふらつきながらも周りを見る。


周りのみんなも何が起こっているのかわからず俺を凝視している。


つぶされたはずの男が俺の背後で立ち上がる。


「何が起こったのかは知らんが、どうやら俺の勝ちの様だな!!」


つぶれた体を再生しながら立ち上がる男。


「いいや。

お前の負けだ。」


父がそう言ってナイフを拾い上げて男を刺す。


父は狂ったように何度も何度もナイフを男の体に刺す。


母が止めに入ってやっと手が止まった。


男は最後に笑みを浮かべ、男の血を全身に浴びた父と母を見た。


「私はこのまま死にはしない。

もっと面白いものを見せてもらおうか。」


そう言うと、急に姉の身体が崩れだす。


「オリ姉!!」


ばらばらになった姉の身体は風に吹かれて飛んでいった。


姉に続いて、男の身体も崩れる。


俺は姉の来ていた服を抱きしめてその場から動けずにいた。


母が俺を抱きしめる。


「オリビアはな、最初あの男が村に来た時に殺されたんだ。

そしてそのあとティアさんとオリビアを生き返らせてこの戦いを始めたんだ。」


涙をこらえながら説明する父。


「きっと、お前と過ごした時間はオリビアにとっても幸せだったと思うぞ。」


そう言って母を連れて船内に向かって行った。


エマさんは2人を追って歩いて行く。


ルドルフはグレイスを抱えて行った。


顔を埋めている姉の来ていた服からは姉の香りがする。


船は俺たちの村に向かって進んでいく。


海風が吹いて、俺の涙を乾かして姉だったものを吹き飛ばしていく。

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